第48話 伝説級との再戦

「ドラゴンは魔法に耐性があるので、おそらく長期戦になると思われます。長期戦になったら、体力の消耗に十分注意して下さい。誰か1人でも、動きが鈍くなったならすぐに撤退しますので、頭の片隅に覚えておいて下さい」


 注意事項を説明しながら、一つ一つ確認していく。2人は、ちゃんと話を聞いて、頷いてくれていた。


「私は、遠距離から弓を使って攻撃をするから動きが少ないと思う。逆に、姉さんやエリオット君は大きく動いたり、敵に接近して行くって事だから体力が無くなるのは2人のどちらかになりそう。2人の状態は、私が注意して見ておくわ」

「お願いします。全体指示は僕が出しますので、サポートしてくれると助かります」

「私は、とにかく接近しながら攻撃を避ける。そして、少しでもダメージを与える。任せておけ」


 細かな役割を決めて、武器に問題が無いか最終チェック。3人のテンションも良い感じになってきたので、ドラゴンの待つフロアに足を踏み入れる。


「行きます!」

「おう」

「えぇ」

 

 ドラゴンは眠っているのか、巨体を地面の上に横たえて丸くなっていて動かない。これなら、脇をすり抜けて向こう側の通路へ行けるかもしれない、と少しだけ考えた瞬間。奴は、首を上げてこっちを見た。


 やはり、気づかれたか。


「来ます、注意して!」


 僕は2人に注意を促しながら、ドラゴンに向けて魔法を放った。雷の魔法である、サンダーショット。雷が放つ光により、フロア中がピカッと一瞬だけ眩しくなった。奴も眩しそうに、目を細めた。空中でジグザグに曲がりながら、サンダーショットがコンマ何秒かという短い時間でドラゴンに向かって迸る。


「ギャウッッッッッッ!」


 ドラゴンの首の少し下、胴体と首の間の部分にサンダーショットが当たった。口を大きく開き、奴は叫び声を上げている。


 立ち上がろうとしていたドラゴンの機先を制して、戦闘を開始することが出来た。サンダーショットが当たったドラゴンは苦しいうめき声を上げた。だが、ダメージは与えられなかったのか、すぐ立ち上がって動き出す。僕を狙うように真っ直ぐ視線をコチラに向けると、口を大きく開いた。火炎が来る。計画通り、奴の注意を引けたと思いながら魔法防御壁を展開する。まず、この一撃を防ぐ。


 一緒にフロアへ足を踏み入れたフレデリカさんとシモーネさんは、移動して後ろに居ない。フロアを左回りに大きく迂回し、ドラゴンの横っ腹を目指して走っていた。奴は僕の方に注目していて、2人が居ることにはまだ気が付いていないだろう。


 


 ドラゴンが炎を口から放った。それは、僕が発動した魔法防御壁が防いでくれる。放たれた炎の全てを防ぐことに成功。全て受け切り、僕にダメージは無い。その隙を狙って、フレデリカさんが一気に接近してドラゴンの左脇腹に向かって剣を振るう。


「グルルルルゥゥゥ!」


 大剣を受けたドラゴンは、呻くような声を上げて炎を吐くのを止めた。ドラゴンの横脇腹は、剣による傷は付いていないものの、奴の反応から内部に大きなダメージを与えたと考えられる。


「ナイスです! フレデリカさんッ! お願いします、シモーネさん!」

「おう!」

「えぇ!」


 逆上したドラゴンは、腹を攻撃してきたフレデリカさんに目標を変えて、顔を横に向けようとする。その顔に向かって、シモーネさんが弓矢を放つ。ドラゴンの目元の辺りに弓矢が当って、ドラゴンが唸るような低い声を上げた。


「ギャウギャウッ!」


 ダメージは与えられなかったが、その隙にフレデリカさんは離脱。ドラゴンの近くから離れた。


「いきます!」

 

 フレデリカさんとシモーネさんに注目が行っている間、僕は準備しておいた特大な魔法をドラゴンに向かって、再び放つ。


 僕とフレデリカさんとシモーネさんの3人で、上手く連携しながら攻撃を繰り返しダメージを与えていく。


 こうして、ドラゴンとの再戦の火蓋が切って落とされた。

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