第41話 進むべき方向
どうやら、少し神経質になっているようだ。嫌な想像が次々と思い浮かんでくる。あまり良くない状態だということを自覚した。魔力を全部使いきってしまう、という危険な賭けに出ることは避けるようにしよう。
なんとか無事に生き残って地上へ帰れる手段があるとするなら、時間は掛かっても安全そうな道を選びたい。時間を掛けて考えれば、なにか良いアイデアが浮かぶかもしれない。都合の良い、奇跡のような展開を望んでしまう。
「どうしたらいい?」
「もしかすると、上に向かって進むことが最善とは限らないわよ」
「逆に下へ向かってみる、ということですか?」
シモーネさんが提示した新たな可能性に、僕は頭を悩ませる。
僕達のいる場所は、今もなお判明していない。もしかするとリーヴァダンジョンを離れていて、塔のような別の場所に転移させられるのかもしれない。
世界には、地中にあるダンジョン以外にも、地上の建物がダンジョンになっている場所もあった。そんな場所に、僕らは転移させられたのかも。
そうだとすると逆に、下の方に出入り口がある可能性もある。都合の良すぎる考えとは思うけど。
外を確認できる窓のようなものが一切無いため、僕たちは転移してきた後にもまだ地下に居るんだろうな、と勝手に判断していた。
あの転移トラップにより、どこに飛ばされたのか分かっていないのが厄介だった。上に進むか、下に進むべきなのか。でも、奴が立ちふさがっているので上に進むのは無理だった。と、いうことは。
「階段を降りる、という方法もあるのか」
「しかし、この場所が従来通り地下のダンジョンであれば、下へ向かえば向かうほど敵が強力になる、という可能性がありますよね。降りていって遭遇するモンスターについて、僕らは何も知らないですから。正面から立ち向かって勝てるかどうか……」
下に進んだとしても、ドラゴンのような伝説級モンスターが他に待ち構えている、という可能性は低いと思う。けれど、凶暴なモンスターは生息している可能性は高いだろうなと僕は考えていた。10階層で狩っていた時とは比べ物にならないぐらい、厳しい戦いになると思う。それでも、下に行ってみるべきか。
僕は、結論を下した。2人に提案する。
「ここで、ただジッとしていても状況は変わらない。なら、降りてみよう」
「そうだな。エリオットの言う通り、何か行動しないと私たちは死ぬだけだ」
「行きましょう。私も2人に賛成よ」
フロアを通り抜けられないのなら、逆に階段を降りてみよう。出入り口があるか、それともダンジョンの最下層に到達するまで。2人もやる気を出している。これから僕たちが進む方向が決まる。
実は、ダンジョンの最下層には希望があった。そこに3人で無事に到達できれば、おそらく地上へ帰れると思う。そこまで行くのが大変だけど。
ドラゴンが立ち塞がり、通れない道を一旦諦めた僕たち。逆に、下に向かって進む階段を降りることにした。僕らが下へ向かう目的は、もしかするとあるかもしれない出口を見つけるために。そして、地上へ戻る手段を探すために。何とか全員で無事に地上へ帰れるように、僕たちは動き出した。
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