　しかし今回、僕には2人の仲間が居た。彼女たちはまだ、ドラゴンと戦えるようなレベルに達していない。彼女たちのレベルが低い、というわけではない。そもそも、この世界でドラゴンのような伝説級のモンスターと渡り合えるほどの戦闘能力を持つ者の方が少ないと思う。

　ごく限られた力の持ち主でしか、あんな凶悪なモンスターとは戦えないだろう。

　僕は、様々な方法で魔法を極めてきたから戦いに持ち込める。剣や弓では、相性も悪くて彼女たちでは分が悪い。武器も落としてしまったから、戦う手段も無い。

　その2人は、僕が１人だけでドラゴンと戦うと提案したら許してくれるだろうか。戦っている間、隠れて待機していてくれと言ったら黙って応じてくれるかな。

　この世界の常識だと、女が男を守るというのが当然らしい。僕の感覚とは、真逆の考えが根付いている。僕の思っている以上に、その考えは強いらしい。

　だから、男性である僕が1人で強敵との戦いに赴く事を許可してくれないと思う。彼女たちとは今日、出会ったばかりだった。まだまだ僕の実力について、全てを把握しているわけじゃないから。１人で戦うことを了承してくれないだろうな。

　つい先程、協力してモンスターの群れを圧倒した。それで多少は僕の実力も認めてくれていると思う。それでも、あれほど巨大な敵に立ち向かっていける力があることは理解してもらえそうにない。

　無理矢理にでも、戦いには加わろうとしてくると思う。そうすると、逆に危ない。彼女たちを守って戦う余裕はないだろうから、僕たちは全滅してしまうだろう。

　とりあえず、3人で協力して生き残る方法を考える必要がありそうだった。ソロで戦うのは、最終手段として考えておく。1人で戦ったら絶対に勝てる、という保証もない。愛用していたローブを失くして、負傷もしていた。状況が悪く、負けてしまう可能性が十分にある。無理はしたくない。

　もう一つ問題がある。トラップが発動した瞬間、それからドラゴンと対峙した時に危険を察知するのが、ほんの少しだけ遅かった。何とか運良く生き残れたけれども、身体が思うように動かないことを嫌というほど実感していた。

　最近ずっと研究室に引きこもって実験していたから戦うのは久しぶりだったので、仕方ないかもしれない。けれど、想定していた以上に危険を察知する能力が衰えて、身体も鈍っていることが判明した。

　思い付きで、とりあえず潜ってみようという軽い気持ちで挑んだダンジョン探索。まさか、こんな危機的状況に陥るとは思っていなかった。危険な状況に陥るまでに、自分の能力が低下していることも実感できていなかった。とても大きな問題だった。それを後悔しても、もう遅い。

「ふぅ……」

　考え事をしている間に、荒くなっていた息が整ってきた。体力と魔力も少しだけ、回復することが出来たかな。会話は出来るようになった。

　僕が息を整えている間、フレデリカさんとシモーネさんたちがモンスターの奇襲を警戒してくれていた。幸い、モンスターが接近してくる気配はなかった。通路の外に居るドラゴンも、動きはないようだった。

　2人は、僕の呼吸が落ち着いたのを見て視線を向けてくる。

「疲れているところすまないが、どういう状況か説明してもらえるか？」

　フレデリカさんは不安そうな表情を浮かべながら、僕の顔をじっと見つめてくる。そして問いかけてきた。その隣でシモーネさんも、ウンウンと頷いて説明を要求している。３人の中で、状況を一番把握しているのが僕だと分かっているのだろう。

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