第28話 ドロップ品と仲間
僕たちは10階層を巡回して、ドロップ品の入手を目的に遭遇したモンスターとの戦闘を繰り返した。初めて組んだパーティーとは思えないぐらいに、ビッタリと息の合った連携プレーで戦いやすい。戦闘はスムーズで、効率よくドロップ品を入手することが出来ていた。
最初のうちは、3人で声を掛け合いながら動いて戦った。途中から、声も出さずに自然と配置について、それぞれの役割を果たすことが出来るようになった。そして今は、目を合わせて合図すれば察して動けるぐらいに洗練されていった。
倒したモンスターが僕たちの目の前で、光の粒子になって消えていく。まだ周囲の警戒は緩めない。3人の間に、戦闘中の張り詰めた雰囲気が漂ったまま。
「モンスターは……、いません。警戒を解いても、大丈夫です」
周囲を探知する魔法で、モンスターが近くに居ないことを確認する。その後に僕の一言で、フレデリカさんたちは警戒を緩めて一段落した。
「また、ドロップ品だ。ほら」
フレデリカさんが、光の粒子が消えた後に残っていたアイテムを拾う。それを僕のところまで持ってきてくれたので、受け取った。これは、金属の含まれた鉱石かな。拳ぐらいの大きさで、精錬して金属を取り出せば、かなりの価値になりそうだ。
「なんだか、いつもよりドロップしてるな。ラッキーな日か」
「戦闘の回数が多いから、じゃないんですか?」
「いいえ。私も、普段に比べてアイテムのドロップ率が良いと感じたわ。3体か4体モンスターを倒すごとにドロップしてる。かなり運が良いわよ」
ダンジョンに潜るのは久しぶりだったので今回、ドロップ率が良いのか悪いのか。僕には判断することは出来なかった。ただフレデリカさんもシモーネさんも、2人が運が良いと言っていた。なら今日は、運に恵まれているのだろう。
倒したモンスターからドロップしたアイテムは、僕が空間魔法で保管しておいた。ドロップ品は、戦闘や移動する時の荷物として邪魔にならないように運ぶため。僕が空間魔法を駆使して荷物持ちとしての役割を担っていた。とりあえず今は手に入れたアイテムを僕が全て受け取る。無事に地上へ戻れたら、3人で分配する約束だった。
「戦闘が上手く行きすぎて、物足りないなぁ。今日は、剣が振り足りない」
フレデリカさんは不満を言いつつ、大剣をビュンビュンと風を切る音を立てながら上から下へ素振りする。彼女の言うように、僕が牽制で放った魔法が上手く当たればモンスターを一撃で倒せてしまう時もあったから、フレデリカさんとシモーネさんの普段は2人だけの戦闘に比べてみたら、剣を振る回数は少ないだろう。いつもより、大剣を振っていない。それで物足りないから、満たされない気分だという。
「そうね。いつもと比べて、後ろを気にしなくて良いのは本当に楽だわ。頼りになるエリオット君が居てくれたおかげね」
「いえ、そんなことは」
シモーネさんも同調する。クロッコ姉妹から、非常に厚い信頼を寄せられていた。即席で組んだパーティーに対して、これだけ信頼して背中を預けてしまうだなんて。むしろ彼女たちの度胸があったからこそ、パーティーは上手くいったんだと思う。
勘違いかもしれないが、フレデリカさんは初めから。シモーネさんは、3階層辺りから信頼されているように感じた。そして、その時から連携が更に上手く出来るようになって、パーティーとしてガチッとハマったような気がする。
それで、お互いに信頼できる仲間になれた。
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