第21話 2人の得意武器

 もう少しだけ、話し合いは続く。かなり時間が掛かっているけれど、もう一つだけ聞いておきたい情報がある。あとこれだけ聞いてから、ダンジョンに向かおうかな。とても大事な、確認しておくべき事項。


「ところで、2人はどうやって戦うの? 得意な戦法と武器は?」


 もう少し理解を深めようと彼女たちの戦い方と武器について尋ねた。ダンジョンの攻略をうまくいかせるためには、お互いの情報を知っておきたい。


「私の武器は、コレだ!」


 フレデリカさんは後ろに背負っていた、僕の身長よりも長い大剣を右手だけで担ぎ上げる。そのまま、天に向かって掲げた。重さも相当あるだろう。そんな重量があることを感じさせないぐらい軽々と、片手でブンブンと風を切るように振っている。


 刀身は鉄のようだから、両手でも持ち上げるのが大変そうだった。なのに彼女は、片手だけで振り回している。信じられないぐらい、とんでもないパワーだった。でも見た目通り、殴って倒すという感じの戦い方なのか。




「どうだ? カッコイイだろう!」

「はい! 良いですね」


 正直、めちゃくちゃ格好良かった。前世では、剣を駆使して戦うオーソドックスな戦士キャラが好きだった。こんなファンタジーな世界に生まれたんだから、僕も剣を振り回したいと思っていた時期もある。


 残念ながら今世の僕は全然、筋力が足りないので普通の剣ですら満足に持ち上げることが出来なかった。剣を振れないので戦いには使えない武器である。だから僕は、魔法を極める道を選んだというような経緯があった。


 魔法に関しては適正があったようで、魔力を扱うための技術を習得して魔法使いになった。


 今はもう魔法も結構好きになったので、こっちの道に来て良かったと思っている。だが相変わらず、剣が好きだった。大剣を掲げる彼女は、やっぱり格好良く見えた。


 大剣を軽く振るう姿は美しくて、羨ましいと思う。僕は今、羨望の眼差しを彼女に向けていることだろう。




「私は弓」

「へぇ! これは、すごく便利そうだ」


 シモーネさんは、右手に弓を左手に矢筒を持って見せてくれた。彼女が持っている矢筒には、魔力が付与されている。魔法アイテムのようだった。


 見たところ、魔法の矢を半永久的に生成してくれる効果があるようだ。ダンジョン攻略中に、弾切れを起こす心配をせずに済みそうなのが良い。


「後は、コレも使うわね」


 シモーネさんは弓と矢筒を肩にかけ直すと、腰に下げていた細身の剣を抜き放つ。細身で先端が尖った剣。レイピアのように、突き刺して敵を倒す武器なのだろう。


 どうやらシモーネさんは、遠距離の弓術だけでなく近距離の剣術も使えるようだ。フレデリカさんの豪快さとは逆に、技巧的な感じの戦い方なのかな。


「僕は、さっき説明した魔法を使います」

「それは心強いな」

「遠距離からのバックアップが増えるというのは、とても良いですね」


 幾つか使える魔法や得意としている技について、彼女たちに説明する。こうして、ダンジョン内での3人の動きについて話し合って決めた。


 議論した結果、フレデリカさんが大剣で前衛を担当する。戦闘が起こったら、一番前に出ていってモンスターと戦う。


 僕は、少し離れた場所から魔法を当て前衛を助ける。後衛からの支援を任された。


 そしてシモーネさんは、後ろから弓を放ちながら状況を見て前に出る判断を下す。前衛と後衛を使い分ける。つまり、状況を見てタイミング良く動かなければならないから大変そうだ。


「それじゃあ、そろそろダンジョンに向かいますか」

「おう、行くか」

「ようやくね。早く、モンスターと戦いたいわ」


 話し合いは終わり、互いの事を多少は知ることが出来た。なので、ようやく僕らはリーヴァダンジョンへ向かった。

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