第15話 クロッコ姉妹

「彼女たちとダンジョンに入ることに決めたので、手続きをよろしくお願いします」

「クロッコ姉妹ならば、戦力的にも問題は無さそうですね。わかりました、それではまず先に冒険者証明証の再発行をしましょう。ちょっと、古くなっているので」


 どうやら彼女たちは名の知られた冒険者のようで、ダンジョン探索について戦力的には問題はないようだ。




 ダンジョンの入場許可を用意して貰う前に、古くなっているという冒険者証明証を再発行して貰うことになった。


 僕の持っている物はだいぶ古くなっているらしく、過去の実績記録が全て消失して無かったことになってしまうようだ。


 ギルドにはずっと来ていないし、何十年も活動していなかったので実績が全て無くなってしまった事は仕方がないと思って諦める。冒険者だった頃の実績については、あまり価値を感じていない。というか、研究者だった頃にも実績や評価をあまり気にすることがなかった。


 僕は、周りからの評価についてそんなに執着しないタイプだった。というか、この特性はエルフっぽい考え方なのかもしれない。


 今回のダンジョン探索を終えれば、僕は再び旅に出るつもりなので冒険者としては活動する意欲が薄いけれど、念の為に冒険者証明書は再発行してもらう。今後、何が起こるか分からないから。突然、魔法研究所をクビになることもあるので先のことを考え、備えておくことが大事なのかもしれない。


「はい、コレで全て終わりました。コチラをお持ち下さい。ダンジョンの入り口前に兵士の方が居られますので、コレを見せると中に入ることが出来ます」

「はい。ありがとうございます」


 受付の女性はスラスラと、淀みなく注意事項についてを伝えてくれた。お決まりのセリフなのだろう。彼女から手のひらサイズで四角形の薄い木の板を渡されたので、それを受け取った。


「この立ち入り証明書を失くしてしまうと、しばらくはダンジョンに入場することが出来なくなります。くれぐれも紛失しないように注意して、お持ち下さい」

「分かりしました。失くさないように気をつけます」


 懐かしいと思えるぐらい、見覚えがあった木板いた。ダンジョンの入場許可証である。実は、ただの木の板ではなくて魔法の効果が付与されている特殊なモノだった。


 一般人や魔法を不得意としている者には、偽造できないような作りになっている。しかし、チラッと観察してみればすぐに分かってしまうぐらい単純な構造でもある。この程度だと、腕に覚えがある魔法使いなら結構簡単に作れてしまうのではとないかと心配になってしまう。もうちょっと改善できる余地があるのに、もったいないな。まぁ、余計な口出しはしないでおこう。


 手の中でダンジョンの立ち入り許可証の板を転がしながら、そんなことを考える。そして、受付の女性の話について引き続き聞いていた。


「地上へ戻ってきたら、お手数ですが一度ギルドに帰還報告をお願いします。報告の際には、ダンジョン内で手に入れたアイテムを持って来て頂くようにお願いします」


 わかった、と頷く。僕が今日、これから行くリーヴァダンジョンというのは王国が所有するダンジョンらしいので、内部で拾ったアイテムの3割は王都に渡さなければならない決まりである。


 ダンジョンの中で手に入れたアイテムは自己申告制なので、実際よりもギルドには少なく報告する事も出来る。だけど、後からバレた場合には隠した分の何倍も罰金を取られる可能性があるので、正確に報告しないと痛い目に遭う。この辺りのルールについては変わっていないんだなと、遠い昔を思い出しながら話を聞き続けた。


「報告に来て頂く期限がありまして、えーっと、エリオット様は男性なので、報告は今日より1週間を過ぎない間にお願いします」

「1週間?」

「はい。1週間を過ぎてしまった場合は、捜索隊が組まれてダンジョンの中に捜索へ向かう可能性がございます。くれぐれも報告するのを忘れたり遅れたりしないよう、お願いします」


 なるほど、男性限定でタイムリミットがあるというわけか。これも、男性を過剰に守るためのルールということなのかな。

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