第14話 冒険者パーティー
どうしたものか悩む。先ほどまでダンジョン探索は諦めようかと考えていたから。その瞬間に声をかけられたので、今回はダンジョン探索に行くのを止めておこうかなという気分になっていた。でも折角、彼女たちが誘ってくれたので断ってしまうのも悪いような気がして、気持ちが揺らぐ。
うーん、どうしようかな。
今回のタイミングを逃すと、次にダンジョンに潜る機会が来るのは何時の事になるだろう。とりあえず、この国を離れて旅に出ることになるだろうから。もしかしたら一生この地に戻って来ないかもしれない。
そう考えると一番の目的であるお金稼ぎという目的を果たすついでに、思い出作りとして最後に、王都近くのダンジョンに潜っておくのも良いかもしれないな。
だけど、見知らぬ女性たちと即席のパーティーだとトラブルも多い可能性が高い。いつもソロでダンジョンを潜ってきた僕が、いきなり見知らぬ冒険者とパーティーを組んで、果たしてダンジョン探索を上手くこなすことが出来るのか。不安だった。
色々な事情を考慮して、どうしようか悩む。彼女たちとダンジョンに潜るかどうか考えに没頭していると、パーティーを組もうと提案をしてきた彼女が慌てだした。
「あ!? これって、ナンパとかじゃないよ! 全然、貴方が困ってるみたいだったから善意というか、助けたいと思ったから声をかけただけで。本当に、善意だから。ちっとも、やましい気持ちとか少しも無いから大丈夫だよ!」
「いやいや、姉さん。とりあえず、落ち着いて」
「えっ!? 落ち着いてるよ?」
「どう見ても、がっつきすぎ。怖がられてるよ」
僕が直ぐに返事をしなかったせいで彼女は何か勘違いをして動揺してしまい、僕に弁解していた。どうやら彼女も、受付の女性と同様に男性とのコミュニケーションに慣れていない様子。慌てふためいていた。
慌てて言い訳している女性の側に立っていたもう一人の女性が、落ち着くようにとフォローしている。見た目の通り冷静な女性のようだった。もう一人の方は、男性に慣れているのかな。
そんな彼女たちの様子を見て、人柄が垣間見えたような気がする。どうやら悪い人たちではなさそうだなと感じた。折角なので今回は、誘ってくれた彼女たちと一緒にダンジョンに潜ってみようという気になった。
「せっかく誘っていただいたんで、一緒にダンジョン探索をお願いします」
「え? ほんとに!? やったぁ! それじゃあ、早速手続きをしよう!」
僕が一緒にダンジョンにログることを了承すると、無邪気に喜び嬉しそうな表情を浮かべていた。そして手続きを急かしてくる、元気いっぱいの女性。
「もう! 姉さん、そんなにギラついていたら下品な女だって思われるわ」
「バカ! ただでさえ男性との出会いが少ないのに積極的に攻めないでどうする! そんなに呑気でいたら、他の奴らに横取りされてしまうんだぞ。一生、男と縁のない悲惨な人生を送る羽目になる」
「うーん、まぁ。それは嫌だわ」
「そうだろう!」
小声で、そんな事を話し合っている2人。やはり、出会い目的でもあったらしい。だけど、あれだけ会話を隠そうとしない彼女たちを見ていると、あからさまな下心というものを感じなかった。まぁそれぐらいなら良いかな、という気持ちになる。
というか、やはり2人は姉妹だったようだ。冷静な女性の方が、元気な女性の方を姉さんと呼んでいる。顔が似ているのも、そういうことだったらしい。
「でも、姉さん。最初のアプローチは丁寧に、じゃないと速攻で嫌われてしまうかもしれないわ」
「なるほど。そこは気をつけてないとな。最初はなるべく警戒心を持たれないよう、注意をしないといけないのか」
「うん。きっと、そうよ」
「なら、次はどうやって話せばいい?」
「うーん。そうね……」
笑顔の女性と真面目な表情をした女性たち2人で、さらに会話は続いている。僕は彼女たちに巻き込まれないよう、2人が会話に夢中になっている間に手続きを進めてしまうことにした。
「ということで、ダンジョンの入場許可を」
「あ、はい」
僕は改めて冒険者ギルド受付の女性に、ダンジョンの入場許可を申し込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます