第13話 褐色姉妹の冒険者

 後ろから聞こえた声に向かって振り向くと、視線の先には女性が2人立っていた。僕よりも身長が高い女性達が、いつの間にか側に立っていたので思わず圧倒される。見ただけで分かる、戦うことに慣れた戦士のようだ。そんな雰囲気を感じる。


(うわ。でかい人だ)


 彼女たちの姿を見て、そんな感想が頭に思い浮かべていた。1人は、真っ赤に光る太陽を思わせるような輝く笑顔を浮かべている女性。身長が180センチ以上ぐらいあるだろうか。僕と比べると、かなりの身長差がある。頭1個分とちょっと向こうの背が高い。


 そのために僕の目線のすぐ先に、彼女の非常に豊満な胸が飛び込んでくる。彼女が身にまとっている服装は露出が多くて、日に焼けた小麦色の肌に思わず目が惹きつけられそうになる。けれど、何とか我慢した。凝視したら、セクハラになってしまう。


 彼女の側には、もう1人の女性が立っていた。こちらの女性も僕より身長が高い。横に居る女性とは対照的な真顔で、静かな月を思わせるような鋭い表情だ。先ほどの女性と同じように、いや、それ以上に露出が多くて目のやり場に困ってしまう。肌の色についても、先程の女性と同じように褐色だった。豊満な身体つきは非常に艶やかで、真剣な表情とのギャップがたまらない。いやいや、何を考えているんだ僕は。


 2人の女性は表情こそ違うが、顔立ちが非常に似ていると思った。もしかしたら、姉妹なのかもしれない。




 身長の低い僕は、目線を上げる。それに対して、彼女たちは見下ろすように目線を下げて互いに視線を合わせる。すると笑顔を浮かべている彼女が、再び口を開いた。


「もし良かったら、私達と一緒にダンジョンに潜らないか?」

「えっと、僕とですか?」

「そう!」

「えーっと……」


 急な彼女の提案に思わず、言葉を詰まらせてしまう。なぜ急に彼女は、声を掛けてきたんだろうか。もしかして、先ほどのやり取りをすべて聞かれていたのか。疑問に思っていると、彼女は話を続けた。


「さっきの話をちょっと聞いてたんだけど、ダンジョンに入りたいんだろ?」


 やはり、話を聞いていたらしい。僕が建物に入ったとき、コチラに注目していると思っていたが、どうやら僕と受付嬢の会話も聞いていたようだ。


 ダンジョンに入りたいが入れない、という僕の現状についても全て把握されているようだった。まぁ、聞かれて困るような話はしていない。僕が男だとバレたけれど、ちゃんと話し合いが通じる相手なので良かった。会話できるのなら、問題はないか。


「私達と組めば、男でも問題無くダンジョンに入れるんだよな?」


 笑顔を浮かべた女性は、先ほどまで僕と話していた冒険者ギルドの受付に向かって確認する。


「え、えぇ、まぁ……。あなた達がパーティーを組むというのならば、ダンジョンの入場許可は出せるという規則です」


 受付の言葉を聞いて、より良い笑顔を浮かべた女性。それから彼女は、僕の方へと視線を向けた。彼女は僕と、真正面から視線を交わす。


「問題は無さそうだ。ということで、私達と一緒にダンジョンに潜らないか?」


 再度、一緒にダンジョンに行こうと提案してきた。彼女は、イエスかノーかどちらにするのか、僕の返答を明るい笑顔を浮かべて待っていた。

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