第12話 ダンジョンのルール

「えーっと……。一つ確認しておきたいのですが、ダンジョンにはお一人で行かれる予定なのですか? それとも、誰か貴方に同行してくれる仲間は居ますか?」

「え? んー、そうですね。今回は、1人でダンジョンに潜る予定です」


 今まで殆どソロで活動していたので、ダンジョン探索も1人で行くつもりだった。そもそも僕は王都で暮らしてきたけれど、魔法の研究でほとんど魔法研究所の一室に引きこもり実験を繰り返す日々だった。つまり、研究所以外に頼れるような知り合いが居なかった。


 研究仲間や部下が居たけれども、魔法研究所はクビになってしまった。彼らや彼女たちを連れて行くわけにもいかない。


 今から、ダンジョン探索に付き合ってくれそうな人物に思い当たりはない。だから1人で潜る。もともと1人で攻略するつもりだったし。そう答えると、受付の彼女はさらに表情を曇らせる。


「えーっと、そうですか……」

「何か問題が?」

「えっと……、そうですね。大変申し訳ないのですが、リーヴァダンジョンへの入場許可も出す事が出来ません。他のダンジョンも同様です。実は現在、男性お一人のみでダンジョンに入る事は、国の規則により禁止されているんです」

「えっ!?」


 本当に申し訳無さそうに彼女は、許可を出せないと告げる。また僕の知らない間に何か変わったらしい。規則によって、男が1人でダンジョンに潜るのが駄目らしい。昔なら禁止されていなかった、男1人だけのダンジョン攻略。


「どうしてもダメなんですか?」

「はい。このルールも、随分と昔に制定された規則なんですけれど……」


 詳しく話を聞いてみると、近年は男性の人口が更に減っているから男性を保護するために色々とルールが厳しくなっているらしい。新たに制定されたルールに、男性が1人でダンジョンへ入ることを禁止するという規則があるという。


 ということで、僕1人だけではダンジョンに立ち入る許可を貰えならしい。仲間が必要だった。


「ダンジョンに1人で入ろうとする男性が存在するとは、思ってなかったです。あ! いえ馬鹿にした訳ではなくて、凄いというか予想外の展開というか」

「えぇ、そうですね。僕も予想外でした」

「で、ですよね!」


 男性である僕は、1人だけでは制限があって他のダンジョンも全て入れないということらしい。ルールだから仕方ないけれど。


「そうだ。ギルドに所属している他の冒険者に依頼を出して、護衛をしてくれる人を引き連れて目的のダンジョンに潜る、という方法もありますよ。どうしますか?」

「なるほど。えーっと、どうしょうかな」


 ダンジョンに入るためには、絶対に女性の仲間が必要らしい。けれども、ギルドに依頼を出して新しい仲間を集めてまでダンジョンに潜るというのも、やはり面倒だと思ってしまう。


 そもそもを考えると、僕がダンジョンを潜る一番の目的は金を稼ぐことだ。お金が必要になった理由は、魔法研究所から追い出されたときに置いてきた生活用品を買い直すためである。


 道具や生活用品は空間魔法で万が一の場合に備えて用意しておいた、代用品もあるので今すぐ必要という物は少ない。よくよく考えてみると、絶対にダンジョン探索に行かなければならない、というワケでもなかった。


 立ち入りが禁止されているのなら、今回のダンジョン探索は諦めることにとしようかな、と決心しかけたその時だった。


「なぁ。そのダンジョン、私達と一緒に潜らないか?」


 受付の女性と僕が会話している最中、誰かの声が割り込んできた。反対側の方向、つまり僕の背後から力強い女性の声が聞こえてきた。

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