第11話 冒険者ギルド受付との対話
「うーん……。え? あ、あれ、私……」
「大丈夫ですか? また、気絶しないように落ち着いてくださいね」
「あ、あっ……」
気絶から覚めた女性は、目をパチパチとさせている。まだ混乱しているのだろう、周りを見渡して僕と目線が合った。その瞬間に先ほどの出来事を思い出したのかな。恥ずかしそうに顔を真っ赤にして黙ってしまった。
「大丈夫ですか?」
「っ!? ッ、ハイ! ダイジョウブです!」
「ちょっと声が大きいです。落ち着いて」
「あ、は、はい……」
僕がそっと声をかけると、彼女は身体をビクつかせて反応していた。もう気絶する様子は無いようなので安心した。けれど、今度は悲鳴を出さないようにする為なのか口を固く閉じてしまい会話にならない。
「……」
「ん?」
彼女が両手を僕の方に突き出してくる。どういう意味なのかが分からなかったが、どうやら離れてくれというジェスチャーのように見えた。
カウンターを乗り越えて、離れた位置に立った。すると彼女は、口を開いて応えてくれた。
「あ、あっ……。その、本当にゴメンナサイ。私、エルフの男の人と話すのは初めてだったので。えーっと、その、男の人とも話をする機会なんて無くて。生まれてから今まで数えてみたら、数回ぐらいしか経験が無くって。えっと、それで、男の人とは話すのに全然慣れてないって話なんですが。顔もすっごく近くにあったから、その、すごくて。ごめんなさい、自分のことばっかり喋ってしまって……」
「大丈夫ですから、落ち着いて」
「は、はいッ……」
彼女はうつむきながら、口を挟む間もないぐらい必死に説明してくれた。ちょっとばかり支離滅裂になりつつ、かなり早口だったけれど彼女の気持ちが伝わってくる。本当に焦ったんだろうな。悪いことをしてしまった。
彼女の様子を見ていると、本当に男性に慣れてないんだろうなと思った。このまま放置していると、いつまでも続きそうな説明を無理やり遮る。それから僕は、彼女を慌てさせないように気を配って話を続けた。
「突然、目の前で気絶してしまったので驚きましたが、大丈夫ですよ。僕の方こそ、突然フードを取って顔を見せたから、ビックリさせちゃいましたね。ごめんなさい」
「あ! あの、いえ、コチラこそ顔を拝見させてもらったのに、驚いてしまい申し訳ございません。ここに記されている情報が信じられなくて、嘘じゃないということを確認したかっただけで。その、本当にビックリしました」
冒険者証明書の備考の欄に書かれた男性という文字。もともと、証明書には性別について表記する欄は無い。男性が、冒険者になることを想定していないから。備考に書き記すぐらい男性の冒険者は例外的で、珍しいということ。
遠い昔に僕が冒険者になった頃も、男性の冒険者というのは居なかった。なので、証明書を取得するのに苦労した思い出がある。ギルド長に実力を示して認めさせて、かなり説得をして発行してもらった。
「それで、先ほど話したリーヴァダンジョンの入場許可を頂けますか?」
「えーっと、それが、その……」
このまま話していると時間が掛かって、冒険者ギルドへ来た目的を達成できそうになかったので、受付嬢との会話を強引に戻した。ダンジョンに立ち入るための許可をもらう。それが今回の目的である。
僕がダンジョンの入場許可について再び尋ねると、さっきまで目を白黒させていた彼女の表情が一変する。眉の間にシワを寄せて困ったような顔になった。どうやら、また何か別の問題があるらしい。
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