第7話 案内の中にもテストあり
「あらあら。リュウったら、お腹いっぱいでお昼寝しちゃったわね?ニコちゃんとパルちゃんもお昼寝する?」
「ニコ、は、、はやく、はなし、、たい!」
「は、い!はな、し、、たい!」
「分かったわっ♪なら、残りは母さんが教えてあげるわね!」
母=ローラ・ナポリタンは、椅子に座ったままグッタリと気絶しているリュウを抱き上げると、リビングのソファーに寝かせた。
「それじゃ天気も良いし、お外に行きましょうかっ♪ここで発生練習してたら、リュウを起こしちゃうからねっ♪」
「う、んっ♪」は、、いっ♪」
ローラは2人を連れて家の裏手へとやってきた。今朝、リュウが剣の練習をしていた場所だ。
「ふふっ♪可愛い娘たちとピクニックにきたみたいね〜っ♪オヤツでも持ってくれば良かったかしら?」
「はや、く、、おしえ、て?」
「慌てない慌てないっ♪え〜っと、、まずはどこまで練習したのか、母さんに聞かせてくれる?」
コクリッ×2
ニコちゃんとパルちゃんは、互いに目で合図を送り、あ行から順に声に出していった。
「わぁっ!凄い凄いっ!!これならすぐ話せるようになるわねっ♪じゃあ、か行・さ行・た行は行に、点々をつけてみましょう。」
「てん、て、、ん?」」
「そうよ〜っ?か行に点々を付けると、『がぎぐげご』になるのよ?さっ、ご一緒に〜っ?」
「が!ぎ!ぐ!げ!ご!」」」
「うんうんっ♪上手上手っ!!さっ、もう一度〜っ?」
「が!ぎ!ぐ!げ!ご!」」」
と、が行を10分ほど繰り返し、同様に、ざ行・だ行・ば行も行った。
「今のは点々だったけど、次は丸を付けてみるわねっ?」
「ま、る??」」
「そうよ〜っ♪丸は『はひふへほ』にしか付かないから簡単よっ♪丸を付けると、『ぱぴぷぺぽ』になるの。パルちゃんのパもそうねっ?」
「パ、、ルの、パっ♪」
「そうっ♪それじゃあ言ってみましょ〜っ♪せ〜〜のっ!」
「ぱ!ぴ!ぷ!ぺ!ぽ!」」」
と、ぱ行も10分ほど繰り返した。
「さぁ、ここまでくれば残りは小さな子供あ行とや行だけよっ♪これは親の音にくっ付けて、セットで音にしてあげるのよ。例えば、『き』に小さな子供の『ゃ』をセットにすると、『きゃ』になるのよ?」
「きゃ、、きゅ、きょ?」
「そうっ!ニコちゃん凄いわね〜っ♪」
「えへへっ♪」
ここまで練習してきた中で、言葉の原理を理解し始めたニコちゃんは、ローラが教える前に『きゅ』と『きょ』を言い当てた。
ローラはニコちゃんの頭を撫でて褒めてあげる。
それを羨ましそうに見つめるパルちゃんも、負けじと声を出した。
「し、しゃ、、しゅ、、しょ?」
「まぁっ!パルちゃんも凄いわーっ♪偉い偉いっ♪」
「てへへっ♪」
今度はパルちゃんの頭を撫でて褒めてあげる。
こうなると、ニコちゃんの闘争心にも火がつき、『ちゃちゅちょ』『にゃにゅにょ』『ひゃひゅひょ』『みゃみゅみょ』『りゃりゅりょ』を交互に言い当てていった。もちろん、『ぎゃぎゅぎょ』などの濁点ver.も完璧だ!
「本当に凄いわ〜っ♪ここまでよく頑張ったわね!!最後に小さな子供『あ行』を教えて終わりよ。けど、これはあんまり使う機会がないかもしれないから、簡単に済ませちゃいましょっ♪」
という事で、ローラは『ティ』や『ファフィフェフォ』を簡単にレクチャーし、2人の発声練習は終わりを告げたのであった。
「それじゃあ最後に、復習という意味でテストを行います!!これに合格できたら、夜ご飯はお肉食べ放題よっ♪」
「おぉーーっ♪」」
「ふふっ♪では、、母さんへの想いを自分なりに言葉にして伝え下さいっ♪言う言葉が決まったら、母さんのところに来てねっ♪」
しばしのシンキングタイムの後、ニコちゃんからローラの側へと歩み寄る。
「決まったかしら?それじゃあ、どうぞっ?」
そう言いながら耳うちする態勢を整えるローラ。
それを見たニコちゃんは、ローラの耳元でそっと囁(ささや)いた。
「あ、りがとっ♪だいす、きっ♪」
「うっふふっ♪母さんも大好きよ〜っ♪」
ローラはニコちゃんを抱き上げ、高い高いをしたままその場でグルグルと回り、最後にぎゅっと抱きしめた。
続いて今度はパルちゃんの番だ。
「パルちゃんも決まったかしら?では、、どうぞっ?」
ニコちゃんの時と同じように、耳うちする態勢を整えるローラ。四足歩行のパルちゃんに合わせて、しゃがむのも忘れない。
パルちゃんはローラの耳元に囁きかける。
「か、ぞくになれ、、て、よかっ、た♪だい、す、きっ♪」
「うふふふっ♪母さんもそう思うわっ♪大好きよ〜っ♪」
ニコちゃん同様、パルちゃんのことも抱き上げてグルグル回ってから抱きしめた。
さて、テストの結果なのだが、超々ご機嫌のローラを見れば聞かなくても分かるだろうが、無事2人とも合格であった。
「それじゃあ、夜ご飯の準備を始めるから、2人は遊んでて良いわよっ♪そろそろリュウも起こしてあげないと、夜眠れなくなっちゃうものね?」
「うんっ♡」はいっ♡」
3人で家に戻り、ローラはキッチンへ。ニコちゃんとパルちゃんはリビングで寝ているリュウの元へ。
「リュ、ウ?おき、て?」
「おきて、くだ、さい?リュウさ、ま。」
「うぅ〜、、ん。あ、あれ?俺は一体??」
「リュウっ♡」リュウさまっ♡」
俺が目を開けると、ニコちゃんとパルちゃんは一斉に抱きついてきて、俺の顔を2人でペロペロペロペロと舐めまくる。
「あははっ♪いつの間にか寝ちゃってたみたいだね、ごめんごめん。それじゃ、残りの練習を始めよっか♪」
「ふふっ♪もう、だいじょう、ぶ!ニコも、パルちゃ、んも、、ふつう、に、お、、はなし、できる、よっ♪」
「おぉ〜っ!俺が寝てる間に、2人とも頑張ったんだね!?」
「はいっ♪かあさ、まが、、おしえて、くれま、した!」
「そっかぁ♪じゃあ、何かして遊ぼっか?それとも読み書きの練習する?」
「あそ、ぼっ♪」あ、そびたい、ですっ♪」
「ふふっ、了〜解っ♪今は〜15時かぁ。まぁ2〜3時間くらいなら大丈夫かなっ♪何かしたいことある?」
「ニコは、むら、みてみ、、たい!」
「パルも、みたい、、です!」
「じゃ、2人に村の案内をするとしますか!」
村の案内をする事に決まり、その旨を母に伝えて家を出る。
しかし案内と言っても、人口約800人ほどの小さな村だ。
名所や名物なんかも特に無い平凡な村で、いったい何を案内すれば良いのか、、。
とりあえず適当にぶらぶらして、気になるものがあったら寄ってみる感じにしてみようかな!
俺はニコちゃんをお姫様抱っこして、パルちゃんはその俺の左側を歩く。
家を出て村の中央広場に向かって進んでいると、前方に俺と同じくらいの子供がいるのが見えた。
どうやら向こうもこちらに気づいたようで、タッタッタッと駆け寄ってくる。
「やぁ、ミミー。」
「こ、こんにちは、リュウ。そ、、その可愛い子はどちら様かしらっ!?」
「ああ、紹介するね!この子はニコちゃんで、こっちの子がパルちゃんだよ。」
「リュ、ウ?てき?ころ、、す?」
「いやいやいや!敵じゃないよ!この子はミミー。幼馴染って分かるかな?え〜っと、昔からの友達だよ。」
「ふ〜ん!?ニコっていったっけ?私に勝てる気でいるのかしら!?」
「う、ん。ニコ、はつよい。ただのにんげ、んなんか、、1びょう、で、、500にん、ころせる。」
ふむ。ニコちゃんが本気になれば、きっとそのくらいの事は出来てしまうのだろう。
だがしかしっ!!来週から同じ学校に通う仲間なんだから、仲良くしてもらえたらと思う。
「はいっ!!ストップストップー!!!これ以上ケンカを続けるのはダメーっ!!ミミーは何か嫌なことでもあったの?機嫌悪いみたいだけど。」
「嫌なこと、、。べっ、別に何もないわよ!!お姫様抱っこが羨ましいとか、そんなんじゃないわよっ!?」
「そ、、そか。と、とりあえずニコちゃんとパルちゃんも学校に行くことになったから、仲良くしてあげてね?」
「ふ〜ん?ワンちゃんまで学校に連れて行くつもりなの?」
「パルは、いぬじゃ、、ないです。」
「えっ!?しゃ、喋った!?」
「えっと、信じられないかもだけど、パルちゃんはシルバーウルフなんだ。ニコちゃんもそうだけど、まだ人語を覚えたばかりだから、もう少し話す練習が必要なんだけどね。」
「人の言葉を使うシルバーウルフなんて、聞いたことないわよ!?」
「まぁ、そうだろうね〜。とにかく、そういう事だから、、ねっ?」
「わ、分かったわ。ニコちゃん、パルちゃん。私はミミー・フランセよ。リュウみたいに、ミミーって呼んでくれればいいわ。宜しくね?」
「うん、よろ、、しく。」
と、ミミーと握手を交わした2人。
しかし、今回は仲裁に入れたから丸く収まったけど、俺がいない場面だってこの先あるだろう。
明日は読み書きじゃなくて、母さんからの生活ルール講座にした方が良さそうだな。
「そ、それで?リュウ達はこれからどうするのかしら?」
「どうって?」
「だから〜!何か用事があったんじゃないのかってことよっ!」
「ああ〜、そういう意味ね。ニコちゃんとパルちゃんに村を案内するところだったんだよ。」
「うちの村を案内って、何も無いわよ?、、あっ!!そういえば1箇所だけあったわ!!」
「えっ?どこどこ??」
「ふふふっ!2人は甘い物は好きかしら?私が案内してあげるわっ♪こっちよ!」
ミミーが案内をかって出てくれたので、素直についていく事にした。
そして、歩くこと5分。
家からでも徒歩12〜3分といったところか。
到着したのは、中央広場の少し手前に新しくオープンした、ケーキのお店であった。
カフェテラスで食べて、店内でお持ち帰り用が買えるようだ。
メープルシロップのような甘い香りに惹かれ、カフェテラスも満席に近い状態であった。
「ほらほらっ、行くわよっ♪」
「あ、ああ。」
ミミーが先陣を切り、それに釣られるように後へ続く。
空いていたテーブル席に腰掛け、改めて周りを見てみると、客層は若い男女から村最年長の爺さんまでと幅広く、皆楽しそうに笑顔でケーキを堪能していた。
「ほらっ、これがメニューよっ♪決まったら言ってね?」
「わ、分かったよ。へぇ〜、イラスト付きで分かりやすいメニューだね!とりあえず、甘味初体験のニコちゃんとパルちゃんは、俺と同じのでいいかな?」
「う、んっ♡リュウと、いっしょ♡」
「は、いっ♡リュウさ、まっ♡」
「わっ、私もリュウと同じので良いわっ!?」
「えっ?いや、ミミーは自分の好きなのにすれば良いんじゃない?」
「べっ、べべ別にリュウと同じ味を感じていたいなんて思ってないわよっ!!?そ、そうっ!リュウの味覚センスを試してあげるだけよっ!!」
「そ、、そか。じゃあ〜、どれにしようかなぁ〜。」
センスを試すなんて言われたら、下手な物は選べないからな!!
と、俺はメニューを見ながら、わりと真剣に悩んでみるのであった、、。
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