第8話 大改造?



「そ、、それにしても、どうしてニコちゃんはリュウの膝の上に座ってるのかしら!?」


と、メニュー選びをしている俺に、ミミーから質問が。



「え〜っと、、なんて説明すれば良いかなぁ〜。、、う〜ん。明日までに考えとくから、また明日でいいかな?」


「あ、明日も会えるのね!?分かったわ!!や、約束よっ!?」ガタッ


「う、うん。約束するから、とりあえず落ち着いて?、、ねっ?」


「えっ!?、、あっ!コ、コホンっ。わ、悪かったわ。」


興奮して椅子の上に立ち上がったミミーであったが、俺の言葉で冷静になったようで、椅子に座り直して謝罪を口にした。



「さ、さて!何にするか決まったかしら!?」


「う〜ん。色々あって悩むところだけど、このチョコレート・マロングラッセっていうのと、カスタードシュークリーム。それとミルクレープにするよ。ミミーはチョコも栗も好きだったもんね?」


「わ、私の好きな食べ物を覚えてくれてたなんてっ♡、、ハッ!わ、分かったわ!!じゃあ注文するわねっ!?」


妄想の世界から自力で帰還したミミーが、テーブルの中央に置いてあったベルを鳴らすと、店員と思われるお姉さんが来てくれたので、4つずつ注文した。


初めに運ばれてきたのはミルクレープであった。

クレープ生地がいく層にも重なっており、一層一層に生クリームとスポンジケーキが挟まっているようだ。



「じゃあ、ニコちゃんからね?はいっ、あ〜んっ?」


「あ〜〜んっ♡、、んっはぁ〜っ♡リュウっ!早く早くっ♪」


と、ニコちゃんはひと口で甘味の虜(とりこ)になったようだ。早く次のひと口を食べたい願望からか、言葉まで流暢(りゅうちょう)になってるぞ!?



「じゃ、じゃあ次はパルちゃんね。はい、あ〜〜んっ?」


「あ〜〜〜んっ♡、、はわわゎ〜っ!!リュウさまっ、早く早くっ!!」



パルちゃんもだったね。甘味の力は凄く凄いんだな。覚えておくとしよう。


俺はニコちゃんの2周目をフォークで取って口元へと運び、ニコちゃんに食べさせる、、前に自分の口に運ぶ。


まぁ、家での食事と同じ方法を採用しただけのことなのだが、ミミーの方を見ると何やら言いたそうな顔をしているね?



「どうかした?、、あっ、次はパルちゃんね。あ〜んっ?」


「な、なんでもないわ。ただ、学校でもそうやって食べさせるのか気になっただけよ。」


「あ〜、それねー?一応、学校が始まるまでになんとかするつもりではいるんだけど、何か良い解決策はないかなぁ?、、はいっニコちゃん。あ〜んっ?」


2人にあーんさせながらも、ミミーに解決策のアイディアはないかと尋(たず)ねてみた。



「そうね〜、、。2人とも甘い物が気に入ったみたいだから、自分で食べるなら何個食べても良いっていうのはどうかしら?」


「いや、それをすると俺は破産しちゃうからダメだね。」


「そ、そう。」


「まぁ、明日は母さんから生活する上でのルールを教えてもらう事にするから、それで何とか解決してくれると助かるんだけどね。」



ミルクレープを食べ終えるのを見計らい、店員さんが次の皿を持ってきてくれた。


次にテーブルに並べられたのは、チョコレート・マロングラッセ。


チョコを混ぜ合わせたマロンクリームと、砂糖で甘く煮詰められた栗が飾り付けられ、栗の香りが鼻孔をくすぐる、香り高く上品なケーキであった。



「あぁっ♡リュウの味覚センスは素晴らしいわっ!!私はこのケーキを食べる為に生まれてきたんだわ〜っ♡」


「そ、、そか。でもまぁ、ミミーがそこまで言うなんて、よっぽど美味しいんだろうね!、、はいっ、ニコちゃん!あ〜んっ?」


「あ〜〜〜んっ♡、、んあぁ〜っ♡美味すぎるよ〜っ♡」


「ふふっ♪そんなに美味しいんだ?、、はいはい、パルちゃんもね?あ〜んっ?」


「あ〜〜んっ♡、、ウワォーーーンッ♡美味しすぎます〜っ♡」


ニコちゃんとパルちゃんは、あまりの美味しさに、目を閉じてうっとり甘い余韻に浸っている。


今なら普通に食べられるね。と、俺もチョコレート・マロングラッセをひと口食べてみた。


ふむ!!コレは美味いぞっ!!

チョコの甘さと栗の甘さが絶妙に合わさり、口の中で溶けていく。目を閉じると、秋の紅葉が頭の中を甘く彩っていくようだ。



クイックイッ、、


俺が甘い余韻に浸っていると、ニコちゃんがあーんしながら俺の服を軽く引っ張ってきた。


ああ、分かってるよ。この美味しさを求めるのに言葉なんて要らないね。


コクリと頷(うなず)き、ニコちゃんに次のひと口を食べさせてあげる。


パルちゃんの方を見ると、こちらも口を開けて待っていたので、コクリと頷き食べさせてあげた。


そして俺もひと口。



こうしてチョコレート・マロングラッセを味わい尽くした4人であった。


これはお土産に買って帰ろうと思う。



さて、最後に運ばれてきたのはカスタードシュークリーム。

まるで夕陽のような生地の中には、たっぷりのカスタードクリームと生クリーム、そして子供の夢が詰められている。



「でも、マロングラッセを食べた後だと、少し見劣りしちゃうわよね?」


「まぁまぁ。そんなこと言わずに食べてみようよ。ほら、ニコちゃん?これはさすがに手で持って食べてね?パルちゃんもね?」


「うんっ♡」はいっ♡」


4人で一緒にシュークリームを口にした。


、、っ!!店員さんが何故この順番で持ってきたのか、その意味が分かった気がする。


カスタードの強い甘さが口の中を支配したかと思うと、生クリームの柔らかな甘さが優しく撫でて溶けていく。それは夢のような甘いひと時。


先にこれを食べていたら、マロングラッセの甘さが弱く感じていたことだろう。


店員さん、グッジョブ!!


俺は店員のお姉さんにサムズアップしておいた。



「ふぁあ〜っ♡さっき言ったのは撤回するわ〜。この順番が正解だったわね〜っ♡」


「そうだね!ニコちゃん、パルちゃん。満足したかな?」


「うんっ♡来てよかった!ミミー、ありがとっ♪」


「パルもケーキが好きになりましたっ♡ミミーさま、ありがとうございますっ♪」


「うふふっ♪どういたしましてっ♪」



お土産にケーキを20個ほど注文し、お会計。


4人とも大満足のケーキタイムであった。

ミミーが財布を持ってきてなかったので、全て俺の奢(おご)りになった以外は、、ね。


まぁ、案内してもらった御礼って事で、店で食べた分を奢るのは吝(やぶさ)かではないのだが、なんでミミー家のお土産まで俺が払わなきゃならんのだ!!


はぁ、、6840GLD。俺のお小遣い約1カ月分が、、。


俺は涙目で寂しくなった財布の中を覗くのであった、、。



ケーキ屋さんから出た後ミミーとバイバイして、俺たちも家に帰る事になった。


本当は、村の中央広場を見てから帰るつもりだったのだが、ニコちゃんとパルちゃんのヨダレが凄まじかったので、帰ってお土産のケーキを食べることにしたのだ。


家に向かって歩いていると、後ろからシュタッシュタッシュタッという、俊敏な四足歩行動物の駆ける足音が聞こえてきた。


パッと振り返ると、ギン・シバ・ウル・ルル・シールの5匹と、ずっと遠くに父の姿が見えた。



「ウワォーーーンッ♪」ワフッ♪」ワフッ♪」


「ふふっ、皆も帰るところだね?一緒に帰ろっか♪」


「ワフーンッ♪」」」


と、ギン達も一緒に帰ることにした。

父は1人で帰宅となってしまったが、いい歳した大人が迷子になることはないだろう。



家に着き玄関ドアを開けると、何やらいつもとは違う雰囲気に気づいた。


玄関にはシルバーウルフ用の、洗浄魔法が付与された足拭きマットが設置されており、廊下には赤い絨毯(じゅうたん)が敷き詰められている。


壁には色とりどりの綺麗な花飾りが取り付けられていて、見た瞬間に心が躍る。



「え、えっと、、家、間違えたかな?」


「そ、そんな事はないですよ?リュウさまの匂いがしますから、、。」


「そ、、そか。」


シルバーウルフの嗅覚によると、間違いなく俺たちの家との事だが、、。


家にいた母さんに、何があったのか聞いた方が早いか!


と、恐る恐る足を進め、リビングの入口ドアの前にきた。


ふむ。出かける前は木製のドアだったよね?

なんか、軽くて超丈夫なミスリル製になってますよ?リビング兼災害時避難シェルターにでもするつもりかな!?



俺はそ〜っとドアを開けて、中の様子を確認してみる。


そこで俺が目にした光景、、それは、まるで王城で開かれる王国貴族達を招いたパーティーのような、煌(きら)びやかに飾られたものであった。


天井には綺麗なガラス細工で作られたシャンデリアが3つ設置されており、天窓はステンドグラスに変更されている。


床はフローリングから磨き上げられた天然大理石に。


5.4m×1.8mのテーブルは、家族が増えたから全員座れるようにという事なのだろう。


そして、子牛の丸焼きが乗せられたデカイ台車が5台。しかし、空きの台車が3台あるのを見ると、まだまだ出てくるのだろう。


壁際には、メイド服をきたお姉さんが8人、コック帽を被った白い服の人が5人。

部屋の四隅には、フルプレートアーマーを装備した騎士っぽい人も居るね、、。



いや、、そもそも、部屋の広さからしておかしな事になってますよ?


目算ではあるが、ビフォーより約4倍広いアフターリビング。


某大改造職人でも、2時間でこの改造は無理だと思う。



「あら〜っ♪帰ってきたなら、早く入ってきなさいなっ?」


「あ、えっと、、た、ただいま。」


「ふふっ、おかえりなさいっ♪今お爺ちゃんを迎えに行ってるから、先にお風呂に入ってきちゃいなさい?あっ、ルルちゃんとシールちゃんも一緒に頼むわね〜っ♪」


「う、うん。じゃ、じゃあそうするね。」


事情を聞く前に、お風呂行きが決定してしまったので、母さんにお土産を渡し、仕方なく皆を連れてお風呂場へと向かう。



脱衣所にきて思った。


改造されてるの、リビングだけじゃないねっ!?


お風呂場も改造されたよね!!?


既に、6帖の脱衣所が24帖になってるし!!


俺は浴室へと続く曇りガラスのドアを開いてみた。


ああ、、どこの高級宿屋の大浴場よりも豪華になってるよ。


パッと見、56帖の浴槽が真ん中にあって、ジェットバスコーナー、滝湯コーナー、炭酸風呂コーナー、サウナ、、あっちの奥の扉は恐らく露天風呂なのだろう。



と、全く理解が追いつかない俺は、新・脱衣所に設置されていたマッサージチェアにて、体をほぐしながら思考もほぐそうと試みるのであった、、。

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