第4話 母の計画



母と3匹のシルバーウルフ達がリビングから出て行き、入れ替わりで父と3匹がリビングに戻ってきたのだが、3匹は父の影に隠れているようだ。



「ふぅ〜。見てみろ、リュウ!」


「ウワォ〜〜ンッ♪」」」


父の言葉を合図にして、俺の前に姿を見せてくれる。



「ええ〜っ!?すっごい綺麗だね!!ツヤツヤサラッサラだよ〜っ!!」


「父さんも驚いたぞ!この輝く銀の毛並みが、シルバーウルフの由来だったんだな♪」


「うんうんっ♪、、それで、名前はもう決まった?」


「もちろんだ!右から、ギン・シバ・ウルだ!!」


「ワフンワフンッ♪」


「そっかぁ!ギン・シバ・ウル、よろしくなっ♪」


俺は3匹と改めて握手を交わした。



「さて、、と。俺はそろそろ寝るとするね。ニコちゃん達はどこで寝させればいいかな?」


「ん?好きなところで寝かせて良いぞ!、、ニコちゃんはリュウから離れたくないみたいだけどなっ♪」


「キュ〜ンッ♡」スリスリスリ、、


「そうだね。じゃあギン達は父さんと一緒で良い?」


「ワォ〜ンッ♪」」」


「おっ、そうかそうか!じゃあ今日からよろしくな!!」


「残りの3匹は、今日はとりあえず母さんと一緒でお願いしておいてくれる?」


「ああ、分かったぞ。それじゃあ、明日こそは寝坊しないようになっ?」


「わ、分かってるよ。おやすみ〜。」


「キュ〜ンッ♪」


「おやすみ!」ワフンッ♪」」」


こうして、俺はニコちゃんと二階の自室へと戻った。



「さてニコちゃん?ここが俺とニコちゃんの部屋だから、大切に使ってね?」


「キュ〜ンッ♡」ペロペロッ


「ふふふっ♪くすぐったいよ〜っ♪お返しに〜、、こちょこちょこちょ〜っ♪」


「キュッキュ〜ッ♪」


と、寝る前に少しベッドの上で遊んでみたが、さすがに今日は疲れていたのか、知らず知らずのうちに夢の世界へと旅立っていた。

ニコちゃんを残して、、。



「キュ〜ン??」ペロッペロッ、、


「ス〜、、ス〜、、。」


「キュ〜ン、、。」チュ〜ッ♡





「キュ〜ン♡」ペロッペロッ♡


「ふふっ♪くすぐったいよ〜♪おはよっ、ニコちゃん♪」


翌朝、ニコちゃんに首を舐められて目を覚ました。

まぁ、目を覚ましたとは言っても、目は閉じたままで睡眠の余韻に浸っている状態なのだが、、。



「キュ〜ッ♡」ペロペロペロッ♡


「んっ、、んん〜??」


あら?何やら口の中に入り込んできた?

それが俺の舌に絡みついてくるみたいだが、嫌という感じではなく、むしろ心地良い感じだな。


唇にもしっとり柔らかいものが触れてるみたい。


ふ〜む。なんなんだろう?


俺はゆっくりと目を開き、謎の現象の正体を確認する事にした。



「、、、。」


「キュ〜ッ♡」ペロペロペロペロッ♡


ふむ。正体はニコちゃんと同じ鳴き声の美少女だったんだな。

正体も分かったことだし、もう少しこのペロペロを楽しむとしよう。


俺は再び目を閉じて二度寝に入る、、、


って!!?そんな意味不明な状況を見なかった事にしちゃダメだろ!!


カッ!!と目を見開き、両手で目の前の美少女の肩を掴んで、べったりと密着していた互いの体を離し、上半身を起こした。



「キュ〜ン??」


「えっと、、君は〜、ニコちゃん?」


「キュンッ♡」チュッ♡


「そ、、そか。一体何が、、の前にっ!!これっ!!」


俺は慌てて、ニコちゃんの体を毛布で包んだ。


だって、生まれたままのお姿なんだものっ!!



「さ、さて、ニコちゃん?昨日の夜、何があったのかな?」


「キュ〜ンッ♡」チュ〜ッ♡


俺の質問に対し、ニコちゃんの答えは、、キス?


つまり、寝てる俺の唇を奪った結果、人の姿になってしまったという事のようだ。


信じがたい話ではあるのだが、家族の証の力?で、ニコちゃんが嘘をついていないというのが分かる。



考え事をしている間も、ニコちゃんはおれの体にしがみついて頬ずりしている。


さて、どうしたものか、、。


まずは母さんに事情を話してみるのが得策かな?



「ニコちゃん。まずは母さんに話して、服とかをなんとかしよう。」


「キュン??」


「いや、人の姿で全裸なのはまずいんだよ。ねっ?」


「キュ〜ン?」


ニコちゃんはよく分かっていないようだが、こんな美少女が全裸で歩いていたら、変なおじさんに変な事をされてしまうからな!!



俺はニコちゃんに立ってもらい、先に今の姿を確認しておく事にした。


ふむ。背は100cmくらいで、スラッとスマートな体型だね。


小麦色のサラツヤストレートの髪が肩に掛かるくらいの長さで、猫耳・猫尻尾を標準装備しているが、そのあたりは、猫獣人だと言えば問題ない。


パッチリ二重の大きな目に、小さなお鼻が可愛らしい!

お口もオニギリのような形の猫口で、これまた可愛い!!

整った輪郭と相まって、究極の可愛さを表現したと言っても過言ではないだろう!!!


手や足もちゃんと人と同じになってるし、体毛に至っては全身永久脱毛したのかと思うくらいツルッツルだったな。


獣人というと、脚だけ毛むくじゃらだったり、胸毛モッサモサだったり、、というのが世間一般の常識だから、逆にこれだけツルッツルだと猫獣人と言って信じてもらえるかが不安要素ではあるが、、。


まぁそこは適当に言って誤魔化せばいいか。

実は脇毛がボーボーなんだよ、、とかね。



「じゃ、母さんのところに、、って!ちょっと待ってね?さすがに抱っこはキツいと思いますよ!?」


「キュ〜ンッキュ〜ンッ♡」ピョンッ♡


「わゎっ!!、、って、あれ?体重は昨日と変わってないみたい。」


ピョンっと俺に向かって飛び跳ね、宙で体を丸くしたニコちゃんを、お姫様抱っこの態勢で抱きとめたのだが、不思議な事に体重は昨日と変わらず10kgないくらいであった。



「キュ〜ッ♡」ペロッペロッ♡


「ちょっ!待って!?今の姿で首ペロペロされるのは、色々と問題があるんだよ。」


「キュ〜ン、、。」しょんぼり、、


「わっ、分かった!2人きりの時は好きなだけしていいから!!ねっ?」


「キュ〜ンッ♡」ペロッペロッ♡


分かってくれたのか、部屋から出てリビングに入る前にペロペロから頬ずりに移行してくれた。


そしてキッチンにいる母に近づく。



「母さん、おはよう。」


「あらっ!リュウが自分で起きてくるなんて、珍しい、、説明しなさい?」


朝ご飯の支度をしていた母であったが、お姫様抱っこ継続中の俺が視界に入った瞬間に、その手を止めて説明要求をしてきた。


俺は左手の甲に浮かび上がった猫ちゃんイラストを見せながら、ニコちゃんから受けた説明を伝えた。



「、、う〜ん。母さん思うんだけど、その猫ちゃんイラストっていうのは、家族の証というより、生涯の伴侶の証って意味なんじゃないかしら。」


「ええっ!?なんでそう思ったのか聞いても?」


「だって、ニコちゃんの左手の甲にもお揃いの猫ちゃんイラストがあるし、リュウの事大好きって見てれば分かるわよっ♪」


「そうなのっ!?、、ホントだ。お揃いだね。」


「それにニコちゃんの親御さんも言っていたのでしょう?ニコちゃんをリュウに託(たく)すって。それは伴侶としてって意味だったのよ、きっと。」


「うーむ。6歳の俺にはまだ分からないなぁ。」


「ふふっ♪これから2人で一緒に成長していけば良いと思うわっ♪」


「うん、そうするよ!」


「キュ〜ンッ♡」


「それじゃ、ひとまずはリュウのお下がりの服をもってくるわね?朝ご飯食べたら、ニコちゃんの服を作る事にするわねっ♪」


「うん。お願いするよ!母さん、凄く楽しそうだね?」


「そりゃそうよ〜っ♪こんなに可愛い娘ができたんだものっ♡リュウを女の子として育てる計画もあったのよ?」


「そ、、そか。じゃあ俺は父さんの手伝いに行ってくるよ。ニコちゃんを頼むね!」


俺はニコちゃんを下ろし、母さんにニコちゃんを任せた。

そして作業着に着替えて畑へと向かった。



「おっ?おはようっ!今日は早いじゃないか。」


「父さん、おはよう!まぁ朝から色々あってね〜。ギン達も手伝ってくれてるんだね!」


「ああ、凄く助かってるよ!!」


「ウワォ〜ンッ♪」」」


ふむ。3匹とも凄すぎるよ?二足歩行だけでも凄いのに、器用に手押し荷車に荷物を載せて運ぶって、、。


俺いらないんじゃね?



「えっと、、父さん?何かやる事あるかな?」


「ん?ああ〜、そうだったな!ギン達がやってくれてるから、リュウの仕事が無くなってしまったなぁ。まぁ入学も近いし、剣の練習に充てても構わないぞ?お小遣いは今まで通り300GLDやるから、そこからギン達に何か買ってあげるといい。どうだ?」


「うんっ、ありがとう!そうさせてもらうよ。」


そうと決まれば剣を取りに行かなきゃなっ!



俺は部屋に戻り剣を背に装備して、再び畑へと向かった。


畑の横で剣の素振りを始める。

ここなら父さん達の作業終了に合わせて、剣の練習も終わりにできるからね。



「よし。昨日と同じく、まずは基本の型から、、。」


剣を上段に構えて斬り下ろす。そこから横に払い、袈裟斬りへと繋げる。

逆袈裟斬りから突きに繋げたり、小手打ちから斬り下ろしへ繋げたりもした。


ふむふむ。昨日よりも剣が手に馴染んできたからか、大分スムーズに振れるようになった気がするね!



「あらあら。ギン達に仕事を押しつけて、リュウはサボって剣で遊んでるのかしら?」


「えっ!?あっ、母さんっ!ち、違うよ!?」


「ふふっ、さっき父さんから聞いたから知ってるわよっ♪」


「なんだ〜っ。驚かせないでよ〜!そういえばニコちゃんは?」


「ほら、恥ずかしがってないで見てもらいなさい?」


「キュ〜ン♡」もじもじ、、


母さんの後ろから、ニコちゃんがホッペを桜色に染めてスカートの裾を手でいじりながら出てきた。


ニコちゃんが着ていたのは、可愛らしい白のブラウスと、フリルの付いた赤のスカートであった。



「わぁっ♪凄く可愛い!!似合ってるよっ♪」


「キュ〜ンッ♡」スリスリ♡


「ふふっ、よしよしっ♪」


俺は抱きついてきたニコちゃんの頭をなでなでしてあげる。



しかし、俺の中に一つの疑問が生まれた。

確か母さんは、こう言っていた気がする。


『リュウのお下がりの服を』と、

『リュウを女の子として育てる計画』と。


可愛らしいブラウスとフリル付きスカート、、。


この疑問を追究してはいけない。

俺は背中に冷や汗を流しながら、苦笑いを浮かべるのであった、、。

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