第123話 広場前実況中継
――魔物都市キャット・ニャーの中央広場
広場では皆ポカーンとした顔で映し出されていた到底あり得ぬ画像を眺めていた。
カイ様のことだ。これ以上驚かぬと決めていたが、流石にあれはない。あり得ない。
あの各戦場で行われているのは、もはや戦争ではない。ただの圧倒的強者が踏みつぶす殲滅戦。あれだけ、僕らを絶望のどん底に追いやった悪軍とやらは、カイ様の配下のお歴々により無残に朽ち果てていく。
「何よ、あれ?」
ラミエルが己の胸を右手で鷲掴みにしながら、そんな疑問の言葉を絞り出す。
「至極当然の結果である」
大した感慨も浮かばずに大きな欠伸をするアスタさんに、
「当然の結果って、相手はあの悪軍よッ!」
ラミエルが声を荒げる。
「私にはとてもそうは見えないんですが、悪軍とはそれほど強い存在なのでしょうか?」
凄惨なシーンであるせいか、真っ青に血の気の引いた顔で姉上はラミエルに問いかける。
そのある意味わかりきった質問に、ラミエルは呆気にとられたように半口を開けていたが、
「あたりまえでしょう! あれは――」
「君にはその話題につき、それ以上話す権利が認められていないのである。わかったであるな?」
いつの間にか背後に移動していたアスタさんが背後からラミエルの両肩を掴み、笑顔で告げる。それは穏やかで決して強い口調でなかったが、ラミエルは口を閉ざすと何度も顎を引いて答えた。
「君の感性は決して間違ってはいない。だが、あの変態どもにとっては悪軍もただの有象無象の雑魚にすぎぬのである」
一言一言嚙みしめるように口にするアスタさんの言葉は奇妙な説得力があった。というか、この戦を現に目にしていればある意味当然の結果だろう。
「アスタ様、ルーカスさんて、あんなに強かったんですか?」
テトルが額に張り付いた汗を拭うとそう疑問の言葉を絞り出す。テトルも正直、僕にとっては大概な実力を有している。そのテトルをして、さっきのあのルーカス・ギージドアの戦闘は異質だったということだろう。
「あれとザック、オボロは既に純粋な人ではなくなっている。ルーカスはドレカヴァクの眷属になっているのがある意味、その証拠といえるのである」
「師父が戦争と呼ぶには取るに足らぬ脅威と言った意味、ようやくわかりましたよ」
テトルがしみじみと呟いたとき、
「おい、ザックさんたちも動いたぞッ!」
ソムニの声に顔を上げると、野性味たっぷりの男が青色の軍服の小部隊の前に姿を現したところだったのだ。
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