第124話 女神連合の参戦

「な、なんだ、こいつのこの速さはっ⁉」


 いくつもの光の筋がジグザクに空中を走る度に悪軍どもの首は折れ曲がり、体に大穴が開く。


「くそったれがぁぁッ!」

 

 それがその部隊の最後の生存者の最後の言葉となった。頭部が明後日の方を向いて、ゴロンと地面へ倒れ伏す。

 ザックは肩で息をしながらも、


「やっぱ、この能力、結構、キツイもんだな」


 額に張り付いた汗を拭いそう独り言ちる。


『俊敏力、膂力、耐久力、魔力のうち最大二つを一定条件下で際限なく30秒ごとに倍化する力ズラか。中々どうして出鱈目な能力ズラ』


 猿神ゴクウがいずこから姿を現すと、ザックに感嘆の言葉を送る。


「やめてくれ。このじゃじゃ馬に振り回されているだけで、全く使いこなせてねぇよ」

『だからこそズラ。発展途上だからこその非常識。デイモスはともかく、お前とオボロ、ルーカスはマジでどうかしているズラ』

「そうかよ。で、あいつらは?」

『あの者どももこの戦場で好き放題暴れまわっている様子ズラ。女神連合も今頃煮え湯を飲んで悔しがっているズラ』


 カラカラとさも可笑しそうに笑うゴクウの背後に、


「そろそろ、時間です。わたくしたちも参戦しますわ」


 丁度話題に上っていた女神連合の盟主の一柱、ネメシスが姿を現す。


「我儘を聞いてもらってすまねぇな。ネメシス姉さん」

「いーえ、礼には及びませんよ。此度の時限的闘争はネメアたち三派閥の長が御方様に上申し、決定されたこと。我らに不満などありようもありませんわ」

『その割に随分と不貞腐れているようズラが?』


口を尖らせて早口でしゃべるネメシスに、ゴクウが半眼を向けながらそう指摘すると、


「ええ、わたくしたちの不満は貴方がた十二支までここの戦に参戦したことです。その件につき、あとでたっぷりと説明願いましょうか? 特に今も殺しまくっている兎女と虎女! どうにかして欲しいものですわッ!」

『あーあ、一応、あんたが怒り狂っていたと伝えて置くズラ』


 まるで逃げるように、雲に乗って空へと消えていくゴクウに、ネメシスは大きなため息をついて、


「では皆さん、時間ですよ」


 ネメシスの周囲に現れる一騎当千の女神たち。


「私、ネメシスと――」

「アテナの名において命じますの――」


 ネメシスとアテナは大きく息を吸い込むと、


「ぶっ殺せぇぇぇぇっ!」


 とても可憐で風光明媚な彼女たちには似つかわしくない荒々しい声を上げる。刹那、一斉に咆哮が上がり、討伐図鑑の中でも有数の戦闘派閥、女神連合が本格参戦する。




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