第121話 悪防衛師団壊滅

『悪名高き悪軍とはこの程度でありんすか。予想以上に弱すぎるでありんす』


 九つの尾に獣耳を生やした女性は小さなため息を吐きつつ、右手を今も混乱の極致にある防衛師団に向ける。


『放つでありんす!』


 銀髪の女の号令とともに、銀色の毛並みの狐たちから、火、土、風、水、氷、雷、光、闇、様々な魔法が放たれると、超高速で防衛師団の兵隊に突き刺さっていく。

 物の数十秒で防衛師団の九割が躯と化し、残り一割が玉虫色の正四面体の結界を張ってしのいでいた。その中心の防衛師団軍団長である豪奢な軍服を着た青白い肌のやせ細った男が、九尾の女に射殺すような視線を向けている。


『しぶといのもいるでありんすね』


 防衛師団軍団長たちを中心に地面に巨大な魔法陣が浮き上がり、それらは巨大な黒色の鎌のような形をとる。その鎌が持ち上がったとき、


『くだらない』


 銀髪の女が、右手の人差し指を向けると凄まじい重圧が防衛師団たちを襲う。数十秒もしないうちに、


『ぐげっ!』

『ぎひっ!』

『げげ』


防衛師団軍団長の傍で結界を構成していた結界を構成していた防衛師団の精鋭たちが押しつぶされていく。


『ぬうっ!』


 脂汗を垂らしながら耐え抜く軍団長に、


『旦那様が愛したこの世界で悪の限りを尽くすのでやんしょう? できるものならやってみるでありんす』


 銀髪の女が憤りを隠しもせず中指も上げる。途端にプチプチと周囲の防衛師団の精鋭たちは潰され肉塊へと変わる。ただ一柱ひとり、軍団長だけが踏みとどまっていた。

 そして――ピシリと結界に亀裂が入る。


『終わりでありんす』


 銀髪の女が涼しいい顔で薬指も立てたとき、防衛師団長の全身はプシュンという音とともに弾けとんでしまう。


『ふん! その程度の自力で、旦那様を不快にさせるなど身の程知らずもいいところで亜ありんすッ!』


 銀髪の女は身を翻して銀色の毛並みの狐たちを引き連れて姿を消した。


 ――防衛師団壊滅

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