第41話 鼠狩りの箱庭造り

 

 【華の死都】の中心、エリア3の廃墟跡


 煙のように姿を現した鼻の長い怪物ギリメカラは周囲を見渡すと、


『この辺でいいか』


 その場でドカッと胡坐をかき、両手で印のようなものを結ぶ。突如、その全身から多量の闇色の霧が湧き出ると大気へ巻き上がり、【華の死都】の全体を覆い包む。

 

『これで虫一匹逃げられんし、この我と同等以上の存在でなければ一切の干渉もできぬ』


 満足そうにそう独り言ちたとき、その傍に佇む人型の白色の塊が出現し、


『ギリメカラ、周囲に侵攻していたクズアンデッドは順調に駆除できています。今追い立てていますので、次期に彼奴きゃつらの包囲網が完成することでしょう』


 報告をする。


『流石に早いな』

『当然でしょうねぇ。またとない我らが至高の御方おんかた神言かむごとですし、皆張り切っておるのでしょうよ』

『我らも負けてはおれぬ。この信仰心を偉大なるあるじにお見せしなければならん』


 ギリメカラは立ち上がり、両腕を広げて――。


『鼠一匹残すことのない敵勢力一切の滅殺、それこそが我が至高の御方の渇望! このゴミムシ、必ずや貴方様のお役に立ってみせしましょう!』


 三つ目の眼球を真っ赤に染めてギリメカラは大気を震わせる声でそう叫ぶ。

 こうして、鼠狩りの箱庭は着々と完成に近づいていく。

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