第40話 最大最強派閥の参戦

 マル頭とサンカク頭のアンデッドが真っ白の灰となって地面に落下した後、額に角のある三白眼の長身の男は刺すような両眼で既に人とは思えぬ形相になった金髪の女に、


『ギリメカラ、御方様の大切な御方はご無事なんだろうな?』


 強く口調で問いかける。

 金髪の女は一瞬で姿を鼻の長い巨大な怪物の姿に変えると腰に手を当てて、


『愚問! 我が領域でお休み頂いておる!』


 大気を震わさんばかりの大声を張り上げる。


『この件、御方様が知って――いや、聞くまでもないか』


 三白眼の鬼神は首を左右に振るが、


『もちろん、あの御方は全てご存じだ!』


 鼻の長い怪物、ギリメカラは即答する。その真っ赤な三つ目の中にあるのは、己の絶対の存在に対する深くも色濃い信仰心のみ。それは一切の虚偽を含まない純粋にして混じりけのない尊崇と崇拝の念。


『お前ら、マジでいい加減にしておけよ。やりすぎて、そのうち御方様に再教育されてもしらねぇぞ? ってそれすらお前たちにとっては御褒美か……まったく手が付けられねぇし、付けるクスリもねぇな』


 三白眼の鬼神は肩を竦めると、大きな欠伸をしつつも姿を消す。

 代わりに残されたギリメカラの周囲に次々に姿を現す無数の異形たち。一柱ひとり一柱ひとりが悪神と邪神からなる討伐図鑑でも一騎当千の実力を有する、最大にして最強の派閥に族する狂信者の集団。


『貴様らぁ、これは今世界での御方様の始まりの戦争だ! 我らゴミ虫どもはどうするべきなのだ!?』


 大地すら揺るがすギリメカラの問いに――。


『例え敵がいかに貧弱でとるに足らぬものであろうと、御方様の手足となりて、背く一切を撃滅せしめるべしッ!』


 背後に紅の円形の武器を背負う全身黒色ののっぺらぼうの存在が、即答する。


『愚かにも偉大なる御方に敵意を向けたクズアンデッドはどうするべきだと思う?』

『容赦の一切ない殺戮のみッ!』


 八つの目を持つ上半身が素っ裸の青年の姿の異形が叫ぶ。


『ならば、我らゴミ虫どものやることは一つだけだっ! 殺せ! 壊せ! 潰せ! 砕け! 我らの至高のあるじ御心みこころのままに!』


 ギリメカラの叫びに獣ごとき咆哮が上がり、最大にして最強派閥ギリメカラ派は、敵一切の殺戮を開始した。


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