ナシキ

第1章 姫と騎兵隊

アメリカ西部開拓時代、かの時代その地での

男女の人口比って知ってるかい? 

おおよそ 100対 2 なんだってさ

過酷な開拓地ではやっぱり女性は住みにくかったみたい。

西部では西部劇でのイメージと違って

女性は非常に大切に扱われたそうだ。

バイク乗りの世界も同じようなモン、

基本的に女日照りの若者ばっか、SNS上では

女性ライダーが溢れてるけどたぶん

あれが全部じゃないかと思う、

しかもネカマも混じってるし、

オフ会でツーリング企画したら来たのはオッサンだった

なんて救われない話もあるんだぜ、

女の子にモテるなんて思ってバイクの扉を叩いた君

残念ながら此処は女の子のいない

乾ききった西部の荒野だ

ご愁傷様

まぁ女性は車のほうが好きよね、

髪も乱れないし化粧も崩れないから、

必然的に貴重な女性ライダーはSNSで人気を集め、ちょっと

カワイイと沢山の男性ライダーが群がって

されるわけで、バイク界隈ではこういう女性ライダーを

ひめ、群がる男どもを囲いかこいって呼んでるんだ、

今回はそのにまつわるお話


僕は免許の書き換えに警察署に来ていた、そうあの事件

の時にお世話になったところ、

え、なんでって思った?

だって僕ゴールド免許だもん

知らない人の為に言っておくと警察署で

お手軽更新出来るのは、5年以上違反の無い優良運転者だけ

ふふふ、僕のドヤ顔を見せられなくて残念残念

そんなわけでこの辛気臭い場所で講習を受けて、今帰る所

免許を受け取り帰ろうとすると僕は誰かに呼び止められた。

「やぁ、久しぶり、あの件では力になれなくて済まなかったね」

見覚えのある坊主頭、久木山だ、

思い出す、あの時警察が動いてくれればっと今でも思う。

だが彼のせいではないだろう、むしろ良く動いてくれた

と感謝すべきかもしれない、

「今日はどうしたの?」

「免許の書き換えですよ」

「え、ここで?君ゴールド免許なの」

「そうですよ」

「ほんとぅ?見せてよ」

久木山は手に取ろうと手を伸ばしてきたが

僕は顔の横で親指と人差し指で摘まむようにして提示

してやった、免許渡すのなんかヤダ

久木山はそれを覗き込むようにして見ると

「本当だわ、我が国の免許制度にも不備があるもんだな」

とかぬかしやがった、慣れ慣れしいんだよ、ほっとけ

「ところで君さ、黒いビックスクーターについて

何か知らない?」

たぶんこの警察署の目の前の道路で起こった銃撃事件の事を

言っているのだろう、犯人は黒いビックスクーターで逃走

していまだ捕まっていない。

「知るわけないじゃないですか」

「でも、ホラッ君ってこの辺のバイク乗りに顔効くじゃない」

「犯罪者に知り合いはいませんよ、僕、善良な市民ですよ」

「ははは、じゃぁさ最近派手に走り回ってる知らない?」

それなら知ってる事は多いにある、が、話す気は全然ない。

が、さっきの質問に比べ久木山の目の奥はマジだ

「なにかあったんですか?」っと探りを入れる、

「ん~まぁな、誘因事故だ」

「誘因事故ってぶつからない事故ですよね?」

「そう、の辺りで無茶したバイクが車を

事故らせてそのまま逃げた、かわいそうに若い女の子が

腕を骨折しちまった。何か知らない?」

「いや、全然」こんなの本当に知らないよ

「ふ~んそうか、んじゃまたな」お前とはねーよ

そう思いながら僕は警察署を後にした。


このところマトモにソロツーに行けない鬱憤もあって

今日もに来てしまった、

別に用事はないが暇つぶしにはちょうどいい。

いつもより早い時間のそのせいか

顔ぶれも違うし、台数も少ない。

昼間の久木山の話もなんだか気になるしな

まっいつものようにMAX珈琲を飲んでだな っと複数の

バイクの排気音が聞こえてきた、五月蠅くはない、多種多様な

バイクの集団、10台程もいる

先頭は白いニンジャ400

あんな色は純正色にはないから全塗装したんだろう

特徴的なのは、ちょっと下品な紫色のポジションランプ、

うへぇキヨスケのR1みてぇ みちかわ向上委員会のキヨスケ

が、乗り手は女のようだ、ヘルメットから流れる髪、

いやいや、まだわからんぜ、メット取ったら長髪男子

って経験もある、だがお尻のラインがキッチリ出ている

皮パン その尻のラインは間違いなく女性だ!ブラボー

女性ライダーは僕の2台右隣に駐車してきた、次々にその隣その隣

とバイクを停めていく、統率とれてんなぁ ははっ騎兵隊かよ

女性ライダーはキチンとしたプロテクター入りジャケットを

着ている、にもかかわらず見事なプロポーション

なのが分かる。

・・・もしブサイクだったら、ずっとメットを

被ってて貰おう、うん、それがいい

しかしメットを取った彼女はプロポーションに

負けず劣らずゴージャスな美人さんだった、グレート!

ああ、姫と囲いのオフ会ツーリングってやつか

なるほどね、

踊るようにバイクを降りてくる姫 缶ジュースを買うにも

トイレに行くにも手下の騎兵隊を引き連れゾロゾロ

ゾロゾロ う~ん女の子は大好きだけど僕はああは

なれない、

僕は協調性ないもの、何より競争率凄すぎない?ムリムリ

まぁ面白いからしばし観察かな、

騎兵隊はオッサン、若者で7:3といったところ

姫と騎兵隊は和気あいあいと談笑し始めた、

騎兵隊のバイクはSSあり、ツアラーあり、

オフ車あり、はてはアドベンチャーと

統一感がない、趣味もツーリングに、

カメラにキャンプとバラバラそれぞれ

が自分のテリトリーに姫を引き込もう

と必死にも見える。

まぁ和気あいあいってのはかもしれない。

最近はベテランオジサンライダーも教える相手に飢えてん

だよ、若者ライダーに何か教えようとすると

「オッサンライダーにマウントされたー」ってすぐSNS

に書かれちゃうからな、まぁ若者ライダーも

暇があったらたまにはオジサンライダーの話も

聞いてやってくれ、そうこうしてるとキヨスケが現れた、

白い2009年型のYZF‐R1の出目金 

ああっと本当にデザインが出目金みたいなんだ、

興味があったら調べてみてよ、バイクの

系譜みたいのを辿るとネットで

簡単にみれるから、

女性が言うにはちょっとイケメンのキヨスケ、

その愛車のR1は本人が言うには、嘘かホントか

200馬力仕様だと、ふ~ん

僕はキヨスケがトレードマークに

している紫のポジションランプが

嫌いだった、アレ下品だろ

キヨスケはバイクを停めると満面の笑みで姫に近づいてゆく

仲良さそう、なんだ知り合いかよ、姫には

極力近寄らないようにしよう、が、騎兵隊はキヨスケ

の事をあまりよく思っていないらしい、漏れ聞こえてくる

話ではキヨスケが付けてやった紫のポジションランプが

気に入らない っと、車検がどーのこーの

まぁ色は確かに違法っちゃ違法だけどね

あれってキヨスケの仕業か、どーりでね


その時、姫が僕のバイクに気が付いた

「あーーーーこれってアレですよね

Kawasakiのスーパーチャージャーのやつ」駈け寄ってくる姫

周りの視線が一気に集まる、うっわ、勘弁してくれ

「はじめて見たー よく見ていいですか?」満面の笑み

お前はアイドルかよ、が、断る勇気は僕にはない

すべからく男は美人に弱いのだ、話の主役の座を

僕のバイクに掻っ攫われたキヨスケはつまらなさそう

ははっザマァ

姫から次々と飛び出してくる質問に丁寧に答える、

なるほど、天然の甘え上手だわこの

が、こうなっちゃ周りの男は面白くないよな

口々に

「凄いけど流石にここまでのパワー要らないよね」

「これだけ尖った性能だと普段使いがな」

「すぐウィリーしちゃって早くないって言うよな」

なんてディスりはじめた、僕、被害者じゃない?

まぁアウェーなのはわかったので、そそくさと退散する

事にした、

「んじゃ、僕、帰ります」エンジンをかけた

ガャルルルルウゥーーー一風変わったエンジン音に

雀どもはすぐ黙った、LEDを点灯させると

が起こった。

じゃあねバイバイまたね♪ 

そう言い残して僕はを抜け出した。



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ナシキ @kengo-634

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