第5話

最寄りに着くと既に祐希が待っていた。

「ごめんなさい。ちょっと同僚と飲んでて。」

傍に行き、声をかけると祐希は何も言わずに私の手を取り、歩き始めた。

「ちょ、ちょっと祐希、手が痛い・・・。」

「いいから、付いて来い。」

「祐希・・・?」

私は冷たく力強い手を振り解けないまま、後に付いて行った。


「痛い・・・・。」

真っ暗な天井を見つめ、呟いた。

あの後近くのホテルに連れ込まれ、ムードも何も無く祐希は私を求めた。

ただ、何かを償うように何度も。何度も。

どうしたの?何かあったの?と聞いても、その都度唇を乱暴に塞がれた。


「・・・・・祐希。」

「・・・・」

「寝たフリ、分かってるんだけど。」

「・・・ごめん。こんな抱き方して。」

さっきまで私に背を向けて寝たフリをしていた祐希が、こちらを向いて起き上がった。

「何かあったの?」

「・・・・」

「祐希?」

名前を呼ぶと同時に祐希は私の事を抱きしめた。

「祐希どうしたの?何か話してくれないと分からない」

「もう終わりにしよう。」


突然言われたひとことに私は理解が追いつかなかった。

「・・・なんで?」

「・・・ごめん。」

「祐希何で・・・そんな急に」

「・・・ごめん。」

「謝らないでよ、何でって聞いてるのに!」

起き上がり腕を掴むと、祐希はバツが悪そうに目を伏せた。

そんな祐希に私は畳み掛けるように言い続けた。

「ねえ、理由は?私、嫌なところあったら直すから。ワガママ言わない。この関係のままでいいから。祐希・・・・あなたを失ったら私」

懇願する私を遮るように祐希は言った。

「子供が、出来るんだ。」

「え・・・?」


抗えない事実がそこにはあった。

私を嘲笑うように、祐希の左手の銀の輪がキラリを輝いていた。




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