第三章 表裏
予知夢、と言うのだろうか?俺がみた夢は全て明日起きることを表している。毎日見ると言う訳では無い。それがどういう条件下で起きるのか俺にも分からない。
母さんとの出かけの約束は守られることは無かった。母さんは病院で仕事をしている。急患が入れば休みの日でも行かなければならない。その事をどうこう言うつもりは無い。それが当たり前だと思っているからだ。
家に居ても暇なだけなので翔を呼び出かける事にした。
「お前から誘われること少ないから嬉しいな〜」
「暇だったからな。用事とか無かったか?」
「大丈夫大丈夫!心配すんなって。俺は有ってもお前のところに行くぜ?」
「ダメだろ…」
向かった先はAE◯N。市内で遊ぶとなればそこくらいだ。そういえば改装されて広くなったんだな。人が多くて人酔いしそうだ。
ブラブラっと歩き、ゲームセンターで散財したり、フードコートで大食いをしたりした。死ぬかと思ったけど有意義な午前を過ごせた気がする。
「腹も膨れたし映画でも見に行くか?」
「面白そうなのあったか?」
「あの、アニメの奴とか良いんじゃね?」
「ならそれにするか」
映画は少女漫画がアニメ映画化した物らしい。
結論から言うと、男が二人で見るような映画では無かった。
「ぐっ…泣いたわ。すげ〜泣いたわ…」
「泣くな泣くな。それハンカチ」
「ありがとう」ブゥー
「おい!?」
こいつ鼻水まで拭きやがった。このハンカチどうしてくれようか…
映画館を抜け、友人に出会す。そんな事あまり無い筈なのだが、今日は会ってしまった。
「あ、木乃江くんと柏井くん!」
「ど、どうも」
「如月さんと誰かさん?こんにちは!」
「ども」
「あ、この子は私の双子の妹の奈留。学校が違うから会うのは初めてだよね?」
「うん、初めまして。俺は木乃江春。こっちは柏井翔」
「翔です!よろしく!」
「ども」
あまり人と話さない子なのかな?それとも人見知り?
「ごめんね?奈留は人見知りだから。気を悪くしないでね?」ヒソッ
「うん、大丈夫だよ。俺もそうだし」
「あ、俺ちょっと用事に行ってくるわ」
「私も…」
「え、え!?」
「おい?」
言うが早いか、二人は俺たちを置いてどこかに向かってしまった。二人きりにしてどうしようと?
「とりあえず、どっか回る?」
「う、うん!」
二人きりで気まずくなると思っていたが、普通に話上手な如月さんのお陰で言葉が交わされないなどと言ういたたまれない空気にはならなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「あの二人いい感じだ!弄るネタできて良かった」
二人を見下ろしながら俺と如月妹は二人を尾行している?いや、見守ってるが正しいよな。春が楽しそうで俺も嬉しい。あいつが苦しい時、そばに居てやれなかったからな。今くらいあいつが楽しく過ごせるようにな。
「…」
如月妹は黙って付いてくるので嫌われては居ないと思う。
「!?」
俺は視界に映った人に目を見開く。そいつは春に惚れていて、如月さんを目の敵にしているクラスの女子の中心人物。名前は清水だったかな?
そいつも下の階の二人に気づいている。なんかされないか注意しないとな…
清水は徐にペットボトルの蓋を開け、二人の頭上で落とそうとする。
やっぱり、何かすると思ったけどな。俺は走って清水の腕を掴み、ホールに引き寄せる。
「ダメだよそれは」
「!?」
「春の日常。普通の日常を脅かさないでもらえる?」
彼女は走って角を曲がり見えなくなった。そのまま今日が終わるまで何もしないでもらいたい。いや、今日だけでなくずっと。
「あなた、タイプが変わるのね」
「うん、こっちが春に隠してる方の顔」
如月妹にバレたが、二人の時間を守れて良かったよ。
「私はそっちの偽りのない方が良いけど。そう言う訳にもいかないんでしょ?」
「うん。これは俺が決めた事だから」
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