第4話 ギルドマスター(4)
オレたちは領主の別邸に到着した。
この都市には領主の別邸が三ヶ所ある。ここはその内の一つだ。
別邸なのに土地の広さ、屋敷の大きさや部屋数等、オレの家の数倍ある。屋敷は四階建てで庭もかなりの広さだ。
普段、領主がここの邸宅を使うことはあまりないらしく、邸宅の管理は二十名ほどの人たちで行っているらしい。この大きさの屋敷を二十人で管理するのは大変そうだ。
先に着いていたアルジェたちが屋敷の人たちに経緯を説明しておいてくれたので、すんなりと屋敷の中へと入ることができた。
「マスター、お疲れ様です。けっこう時間がかかりましたね」
先に着いていたアルジェが声をかけてきた。どうやらけっこう待たせていたようだ。
しかし、ロイたちの姿が見えない。
「あれっ? ロイたちは?」
「館の方から許可をいただき、先に屋敷の中を捜索してもらっています」
「そうなんだ、それはありがとう」
「マスター、一つ聞いてもいいですか?」
「なんだい?」
「なぜ屋敷を探すのですか? 領主様からすでに探したと聞いたじゃないですか?」
アルジェが不思議そうな顔で聞いてくる。
「なんだ、そんなことか。いいかい、アルジェ、コレはかくれんぼなんだ」
「はぁ、かくれんぼですか…」
「そうだよ。リナ様はまだ十歳なんだから隠れるとしたらお家さ」
リナ様はまだ十歳で、貴族の娘なので容易に外出することもできないはずだ。それに一人での外出も慣れていないはずで不安だと思う。
「そうだといいんですが…万が一、誘拐だったら……」
「考え過ぎだよ。貴族の誘拐なんてそんな簡単に起こらないよ。もっと気楽に考えようよ」
「そ、そうですよね」
アルジェはまだ心配そうにしていたが、捜索をロイたちにまかせっきりにするのも申し訳ないので、そろそろオレたちも合流することとした。
ロイ達たちは分かれて屋敷の中を探しているようだ。
屋敷の人たちの話からだと失踪直後に各部屋を一通り探したらしい。しかし、二十名ほどしかいないので隅々まで調べられてはいないとのことだった。今も手が空いている者はロイたちと一緒に屋敷を捜索しているみたいだ。
「ますたぁ、どこから探しますか?」
「そうだな、まずは一通り屋敷を見て回ろうか。まずは一階の右手側の部屋から順番に見て回ろう」
オレとアルジェとミリアの三人で屋敷の中を軽く探索する。特にしっかり探すわけじゃなく部屋の中を確認するだけだ。屋敷がどれだけ広いかの確認のつもりだったが思った以上に広い。
それに調度品や美術品とかも色々飾られており隠れる場所もたくさんあったので、しっかり探すとなるとかなりの時間がかかりそうだ。
ん~もっと人数を連れて来たらよかったな。
「ふえ~このお屋敷広すぎますね~」
「これだけ部屋があると軽く見て回るだけでも時間がかかりますね」
オレ達は次々と屋敷の部屋を見て回っていたが、まだまだ見ていない部屋が残っている。
オレは各部屋に飾られている調度品を見るだけでも楽しいので楽しく捜索できていた。まるで異人館を観光している気分だった。
今のところ大部屋を三部屋、小部屋を五部屋ほど確認している。
途中、物置もあったがそこはすでに屋敷の人が頑張って探していたのでスルーした。調度品が色々保管されていたので、後で見させてもらおう。
オレたちは二階、三階を見た後、四階も確認して回った。軽く見て回っただけだが一時間近く経過している。途中、何度かロイたちや家の人たちともすれ違ったけど、みんな何も成果がない様子だった。
「ますたぁ、やっぱりいませんね~」
オレたち三人は一階から四階まで見て回った後、椅子に座って一息ついていた。
「やっぱり広い家の場合、かくれんぼは隠れる場所は制限しないとダメだね~」
「かくれんぼの話は置いておいて、こう部屋が多く隠れる場所が多いとなると一日かけても全て探すことは難しいですね」
「そうですよね~、ベッドの下やタンスの中とかに隠れてくれているならいいですけど、そんなわけないですもんね~」
「ええ、そんな場所ならすでにリナ様は見つかっているでしょう。マスター、以前リナ様とかくれんぼした時はどんなところに隠れていたんですか?」
「そうだな、その時は普通だったよ。ベッドの下とかカーテンの裏側とかだね。見つかるのも楽しんでいたみたいだよ」
「マスター…、やっぱり今回はかくれんぼではないのでは…」
「ますたぁ、何かいい案はないんですか~?わたし、少し歩き疲れちゃいました」
「仕方ない、少し反則かもしれないが魔法具を使おう」
妹のヒモとなって異世界で生きていく 雪下 ゆかり @yukishitayukari
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