帰り道と心拍数

 始業式の日は、午前中で授業が終わって部活もない。だからかなくんと一緒に帰ることになった。


「ねぇ、一瀬くん、今日......一緒に帰ろう.....?」

 ドキドキした、男の子を誘うのは初めてだったから。


「わかった、ちょっとまっててね。」

 かなくんは笑ってOKしてくれた。

 お互い帰る用意をして昇降口の所で待ち合わせた。


「......。」

 私が緊張して、何も話せずにいるとかなくんが『どうしたの?』と笑って私の方を見る。

 その笑顔をみると、もっともっと緊張して......全身に力が入って歩けなくなってしまいそうだ。


「なんか、こういうの....慣れなくてさ。」

『確かにそうだね』なんて、かなくんは可笑しそうに笑ってまた私の方を見る。


「こはるちゃんと一緒に帰れて嬉しい。これから時間が合ったら一緒に帰りたいなぁ.....。」

 かなくんの言葉に、私の心臓の心拍数は、どんどんと上がっていく。


 ・・・ねぇ、それは期待してもいいの?


 .....なんて、聞ける勇気も無くて。

 約束のことも結局聞けずに、分かれ道に差しかかる。


「じゃあ、また明日。」


「うん、また明日。」

 かなくんと分かれて、一人で家に向かって歩く。


「忘れたのかな......。」

 かなくんと分かれた後も私の心臓の心拍はずっと速いままだった。

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