おまもり。

 長い長いホームルームが終わって、休み時間になった。流石に初日から、新しいクラスの誰かと話せるような勇気もないからグラウンドに出る。


「はぁ.....。」

 クラス替えがあることはわかっていたけれど、去年のクラスメイトがほぼばらけてしまうなんて思ってもみなかった。

 このクラスで一年間やっていけるかと考えると初日からとても憂鬱になる。


「できるよね......?」

 私は制服のポケットを撫でる。ポケットの中には、ストラップが入っている。これは、幼なじみがこの町を出る前に私にくれたもの。

 私の事を好きだと言ってくれた、彼がくれたもの。

 憂鬱なことがある日はいつも、こっそり制服のポケットの中に入れて学校に持って行っている。


「なんだ、私かなくんのこと大好きじゃん。」

 自分でやってる事なのになぜか笑えてくる。昔から、活発な性格で、いつも男の子に交ざって遊ぶことが多かった。

 そんな性格を知っているかなくんが今の私を見たらどう思うだろう......。なんて。

「さて、そろそろ行きますかね....。」

 あと少しで二時間目の始業のチャイムが鳴る。


「やってやろうじゃん。」

 そう口に出して、憂鬱な気持ちに蓋をした。


 ✱✱✱


 学期初目にやることといえば、始業式の後に先生の長い話を聞いて.....。


『じゃあ次は委員会決めだな〜。』

 そう、委員会を決める。誰も立候補したがらないから、長い時間沈黙が続く。最後まで沈黙にたえられた人だけが、役を貰わずに済む。


「.....。」


『誰もいないか〜?』

 先生が困ったように問いかける。それでも手を挙げる人は誰もいない。

あぁ、もうダメだ.....私が耐えられない。

私はゆっくり手を挙げようとした。

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