小さなやくそく。

七瀬モカᕱ⑅ᕱ

思い出

『ずっとだいすきだからね。』

 こう言われたのはもう、随分と前の話。

 この言葉をくれた彼は、今は別の場所にいる。


「はぁ.....またかぁ.....。」

 そして私には、彼のくれた言葉が今も魚の骨のようにずっと引っかかっている。

 もう忘れよう。そう決めてから何年経っただろう。もし、再会できたとして......まだ彼は私の事を好きだと言ってくれるのだろうか。


「あぶね.....遅れるっ!」

 今日から、新学期。新学期早々遅刻するのは、できれば避けたい。

 私は急いで準備を済ませて家を飛び出した。


「ふぅ、まだ間に合う。よかった!」

 学校までは、自転車とバスを使う。ギリギリのところでいつも使っているバスに乗り遅れずにすんだ。


「よし、これでなんとか.....。さぁ、今日も頑張ろー!」

 この時の私は、これから先に起こることをまだ知らない。


 ✱✱✱


『おはようございます!』とたくさんの声が飛び交う朝の昇降口。私が靴を履き替えようとしていると友達に声をかけられる。


「おはよう、こはるちゃん。クラス替えの表見た?」


「あ、待って見てないかも。」


「あ、三組だったよ。今年は分かれちゃったねー、残念。」


「でもりっちゃん、部活同じでしょ?会う頻度減るけど、全く会えないわけじゃないんだから。」


 じゃあね、と言ってりっちゃんと別れて教室に向かう。


 ✱✱✱


『皆さん、進級おめでとうございます。きょうから.....。』


『皆さん、進級おめでとうございます。きょうから.....。』

 予想はしてたけれど学期初めのホームルームはとても長くて少しうとうとしてしまった。

 すると、隣の席の人に机をコンコンと軽くたたかれる。


「......?」

 不思議そうな顔をする私に気づいて、その人はにこっと微笑んだ。

 その笑顔がどこか、彼に.....かなくんに似ている気がしたのは気のせいだろうか。



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