04 (終)

 ぶつかるぎりぎりで。


 なんとか止まった。


「おい。止まってどうすんだよ。おい」


「待て」


 さっきの2台とは、違う。普通の車か。


「姫様」


「その、姫様っていうの、やめてもらえますか?」


「お嬢さんも姫様もだめか。三十路って呼びますよ?」


「廾希。周囲確認」


「やってる。上は管区の増援部隊。周りはその1台だけだ」


 運転席の。顔。


「姫様」


「やめてください」


「訊きたいことがあります」


「なんですか?」


「あなたの恋人。特徴を教えてください」


「45歳。やさしい笑顔のおじさんです。雨にも負けずを体現したような、そんなひとです」


 目の前の車。


「姫様。ゆっくり顔を上げてください」


 後部座席。女が顔を上げる。


「彼です。わたしの恋人」


「よし。引き渡そう。まだ時間はあるけど、俺たちより恋人のほうが安全だろ」


『総監だ。上から掩護する』


 女。


 車から出て。


 男の車のほうへ、駆け出していく。


「よし。仕事終わりだな」


「右折だけでもなんとかなっただろ」


「切り札なんだろ?」

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ライトロード・コンクルージョン (15分間でカクヨムバトル) 春嵐 @aiot3110

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