UFOSF

 その日、人類は恐怖した。


 直径1kmはあろうかという真っ黒な空飛ぶ円盤が突如として新宿上空に出現。駅周辺地域に覆いかぶさったかと思うと、宿。そしてそのまま宇宙の彼方へ、新宿駅周辺を持ち去っていったのである。


 世界中で報道は沸騰した。撮影された動画とともに新宿駅誘拐事件のニュースは世界中を駆け巡る。フェイクニュースに慣れ切った人々は、それを当然のようにスルーし―――そして紛れもない事実であることに気づいて驚愕した。


 そんなニュースを見た人々は当然こう考え始める。


 誰が、何のためにやったのか、と。


 疑念はそこかしこで噴出する。中国共産党の秘密兵器による攻撃だ。米軍の兵器の暴走だ。日本政府が邪魔な人物を消すためにやったのだ。いやロスチャイルド家の陰謀だ、マヤの古代文明が、……等々。


 そして、犯人や目的がわからないことを察した各国の官僚や政治家たちは、多少なりとも建設的なことを考え始めた。


 即ち―――どうやって抵抗するのか、である。


 新宿駅の事例では、あまりにも巨大な円盤が突然現れたが故に撃墜すれば市街地に大きな被害が出るとされ、撃墜できなかった。今回の教訓を踏まえて条約や法律が改正され、未知の円盤が出現したら全ての手順を省略して撃ち落とすことになった。


 他にも多くの変化があった。巨大な円盤を撃墜するために、各国は莫大な予算をかけて戦闘機を開発する。レーダーを宇宙に向けて襲撃の予兆を探す。万が一誘拐されても内側から一矢報いることができるよう、各地に核自爆装置を配備する国さえあった。


 莫大な金が動き、人々は奔走する。人類は初めて、宇宙からの侵略に備えるときが来たのだ……。




 ……一方その頃。円盤の出どころである惑星ではこんな番組が放送されていた。


 以下、日本語に翻訳した形でお送りする。


「……えー、速報です。惑星探査機はやぶさ6が、惑星からのサンプル採取に成功したとのことです。惑星は液体の水が豊富に存在するということで、生命の存在が予測されていました……」


「……観測データによりますとおよそ2m程度、髪の毛の先程度の大きさではありますが生物が存在したとのことで、各国の生物学界からははやぶさ6の帰還を待ち望む声が……」


「……サンプルリターンは我が国が世界に先駆けて行った実験で……」


「……探査機は微生物が最も多く存在する場所を自動的に探す機能があり……」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る