灰猫2

「猫が喋ってる、、」

(え、?え、?)とたじろぐアキベヤを

横目に灰猫はアキベヤを連れてきた少女の方に顔を向けた。

「RADお疲れ様、

私の予言は当たっていただろう」


ラットと呼ばれた少女は目を伏せ

何も言わず立ち尽くす。


「さてアキベヤくん、いつまで驚いているんだい」

「何で、俺の名前を」

「顔を見れば猫は誰だって名前くらい分かるのさ」

「そういうものなんですか」

「そういうものだよ、アキベヤくん」

「はぁ、、」

飄々とする灰猫の様子に

この猫なら

相手の名前を分かる事ぐらい余裕なのかも

知れないとアキベヤは冗談気味に思った


灰猫はさてさてさてと

アキベヤの早速品定めを始める様に喉を鳴らした


「君はどうやってこの世界に来たのかな?

やっぱりあの女神かい?

アイツは何時もナガヒドに

自分のミスを落ち着けるからね

それともあのガタイのいい男神かい?

アイツも異世界から活きのいい人間を連れてくる癖があるからね」


「いや、ちょっと待って下さい」


口早に語る灰猫の言葉を

アキベヤは止める。


「何だい?」


アキベヤの止めた事に少し不安のある声を

灰猫は上げる


アキベヤにとっても女神とか男神とかいきなり言われても分からない事なのだ


「俺、気づいたら神殿で寝ていて

その女神とか男神とかも覚えてないんです」

「まさか、、」


灰猫は驚き。

アキベヤの様子に隣にいるラットも

信じられないといった表情をしている


「灰猫でも分からなかったんですか、

アキベヤが記憶喪失だって事」


RADの言葉に灰猫はうーんと悩んだ動作をした後


「私が予言できたのは、

プロメの神殿にナガヒドが現れるって

事だけだからね

まさか記憶無しだとは思わなかった」


「じゃあやっぱりアイツが、、」


「そうだろうねぇ」


血が出るほど手を握りしめるRADに

灰猫は何も言わずに

アキベヤに向き直る。


「アキベヤくん、

信じてもらえないかも知れないが

君にとっての異世界の此処には

十二人の神様がいるんだ。

そいつらは自分勝手とイタズラ好きが集まって集団なんだけど」

裏路地をウロウロと回りながら灰猫は語る

「一人だけ

そいつらでも恐れて数えられてない奴がいる」

ーーーーーーーーーー

「ロロロ」

ーーーーーーーーーー

灰猫は強く恐ろしげに言う。

その名前をアキベヤは知ってる気がした。

「唯一この世界で好き勝手に

人の記憶を消せる存在

そして君を

この世界に迷い込ませた神様の名前だよ」

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