分からない世界

「アキベヤは探索者に見つからなくて良かったわね」


神殿から地上への階段を降りている途中、

少女は呟いた。


「探索者って君は違うの?」


自分の倒れていたあの神殿は明らかに、

誰の手も付いていない廃墟だった


(神殿に入ってきた彼女は文字通り

探索者なんじゃ)


「私は違う、冒険者をやってる、」


何が違うんだろうとアキベヤが聞く前に

少女は続いていた階段をいち早く降りた


階段を降りた先には

平らな草原が広がっていた。


風が辺りの草を揺らしていて、

整備された道が奥の街にずっと続いている。

「これ、被って」

少女は袋からフードの様な物がアキベヤに投げつけた


「っと」


風で飛びそうになった所をアキベヤは掴む

「ナガビトは目立つから、それ被っていて」


少女は空き部屋にその事を告げると歩き出した、アキベヤは慌ててラッドを追う


道すがら、アキベヤの頭の中は疑問で埋め

尽くされていた


(ここは何処でどうやって来たのか

ニホンとは何なのか

記憶のノイズは何なのか)


考えるたびに

自分が分からなくなっていくのを

アキベヤは感じた


前に歩く、彼女も疑問だ


(名前は?

そもそも何であんな場所に

探索なのだろうか?

何で自分を助けてくれたんだろうか)


(あのダイスの音)


そこまで考えてアキベヤは諦めた

こんな事した所で今変わるわけじゃないし

思い出せるわけでもない。


けど取り敢えず

今は少女の後をついていこう

確実に生き残る道がそれしか無いと

アキベヤは思えた。


「おぉ」

アキベヤは街の門までたどり着くと

10mは悠々と超える立派な石の外壁を

興味深げに見上げた

記憶が無くなる前の

自分もこんな風に景色を見るのが好きだったのだろうか


少女は門番と何度か話すと

門番の手にそっと何かの包みの様な物を渡し


すぐにアキベヤの方に来て

「行くよ」と声をかけられ

二人は再び歩き出した

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