アキベヤRAD

土川琉

第1話。はじめましてイセカイ

カランコロンと

ダイスの降る音が聞こえた


目が覚めたら、

アキベヤは巨大な神殿に寝ていた

冷たい雪の様に白い石造りの建物で

見上げるほどの大きい柱が4本

四角形の部屋の隅に一本ずつ建てられている

「目、覚めた?」

ビクッと悪戯がバレた子供の様に

肩を震わせる。

誰もいないと思っていた筈の背後からの声

アキベヤは恐る恐る振り返った。

そこにいたのは

同じ位の年齢の16か17の少女だった

右肩に袋を掛け、

ダガーの入った鞘を腰に付けている


アキベヤはその姿にただ静かに見惚れた


腰まで伸びる綺麗な灰色の艶のある髪が微かに揺れ

まるで別世界とも思えるほど顔が整っていて

誰にも負けない程のスタイルを持つ美少女だ。


でも、ナイフみたいに冷たい


アキベヤはそう感じた


彼女のルビーの様に真っ赤でまん丸な瞳に

は光が宿っていない

どこまでも冷たく無表情で此方を見ている


「あなた、ナガビトね」

少女は冷たく言った


「ナガビト?」

「そうナガビト、黒髪で

突然現れる人たちの名称

あなたニホンという言葉に聞き覚えがない?」

「ニホン?」


━━ニホン、ニホン?

どこかで聞いた事がある

空き部屋は思い出そうと髪を掻き毟った

━それでも、あれ?思い出せない

思い出そうとすると記憶全体にノイズが走る


「わ、分からない、です、

俺、何にも覚えて無くて、

気がついたらここにいて」


ついつい言葉を震わせたアキベヤは

恥ずかしさから死にたくなったが

少女は笑わずジッと空き部屋を見ている


「名前は覚えてるの?」

「アキベヤ、アキベヤです」

(アキベヤ?)

アキベヤ自身も驚いた

(なんだよ、アキベヤって

部屋じゃ無くて人間なのに)


でも、そんな疑問を吹っ切る程

アキベヤと言う名前は

まるで、ずっと昔から呼ばれ続けていたかの

様に違和感は覚えない。


「アキベヤ変な名前ね」


ーたてと少女に手を引かれ、

立ち上がると。

大きな風がアキベヤをすり抜けた

神殿は山の上に建てられた物で。

そこからの景色をアキベヤは息を呑んだ。


街だ、

大きな壁に囲まれている

二階建て以上ある建物たちがひしめいて

全部の建物が

白にオレンジ色を少し混ぜたみたいな壁に

屋根は真っ赤に塗られていた。


「ついてきて、街まで案内してあげる」

それだけ告げると


少女は神殿の階段を下り始めたので

アキベヤは急いで階段に向かった。

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