第5話

 「……ぷはぁ」

 ドン、カウンターに『VoLTEーXボルテクス』と書かれたラベルのボトル瓶を音を立てながら置く。

 「んで……、今晩オレも、なのか?えぇ?」

 こくん、と頷く直立不動に佇む曇天の部下こと隠者。

 薄暗い、ランタンの明かりがなければ見えはしない。

 頬杖を付き、よれよれの紙煙草シガレットを咥える荒くれた風貌の不衛生な持ち主。

 目から生気は感じれず、深淵その物。白のメッシュが入った黒色の髪の毛。煤汚れた顔には気だるげとイラつきが伺えられる。

 黒ずみ第1、2ボタンが失くなったYシャツ。裾がビリビリ破れたズボンと色落ちし金具がやや錆びたベルト。

 腰掛けた木の椅子の背凭せもたれに被せられ、自作の弾丸ホルダーが縫われた黒ジャケット。

 聖骸布せいがいふを源に縛り付ける。その左手には装填済み4インチのリボルバーのシリンダーをカチャ、カチャと回転させ鳴らす。

 「はぁーあ、……しかも新入りもつれてくるんだろ?邪魔になんないようにしてくれんだろうな?曇天バカは考えがあるんだろうな?」

 ある、とばかりに頷く。

 それに対しいぶかしげる。

 「……じゃあ、支度はするとだけ伝えとけ」


   ※


 「本当に……覚悟がおありかな?新入りの」

 日が沈み、逢魔時となり始めた頃合い。長い石段を下りながら白宗に媿龍院が問いてくる。

はい、と返事だけを返す。

 「……、そうか」

 何かを口に出そうとした、だがしなかった。これから精神衛星に悪いと言おうとしたがやめた。

 「ここは化物しか住めない。化物しか永住権が約束されていない。人間はこの世では害獣認定だ。赤子だろうが幼子おさなごだろうが敵意があろうがなかろうが無害だろうが、全部殺傷されるべきの下に動く」

 「……でも」

 「でももさっちもない。ボクはこれでもオブラートにした。そう、これでもオブラートだ。ボク以外の奴、曇天とかだったら面白おかしくきゃっきゃっうふふと殺した数を教えてくる」

 それでもか、と念を押に聞いてくる。しばらく沈黙してしまい答えられなかった。はぁ、ため息一つを吐き、まぁ答えなくと構わんと吐いた。

 そんな話をしていたら、最後の段を踏み下りる。ふと空を見上げ、媿龍院の眉間にはシワを寄せ「間に合わんな」と言いたげにする。

 「あー、白宗。これを渡しておく」

 銀紙に包まれた丸い2つの塊を渡す。渡されたそれは手に媿龍院の手に収まり、白宗には多少大きすぎた。

 手渡された丸塊と媿龍院を交互に見る。何これと言いたげ層に口を半開く。

 「銀紙それ剥がせば握り飯だから。て言うか、もう日が沈む一直線。徒歩で行ったら夜に到着つくね。それは君の夕御飯になるから腹に込めるんだよ」

 「は、はい……」

 「さて、さてさて……急ぐとなると。飛んで行くか」

 ぷしゅうぅ、媿龍院の体から煙がもくもくと沸いて出る。顔の半分が白煙と化すと東の地に伝わる龍の顔と変化する。

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園~SONO~ Kelma @kelma

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