第77話 頼むから出ていってくれ
「それでは被告人、前へ!!」
裁判所とやらの中央に座するアイシャに言われ、前に出る。
「判決を言い渡す――ねぇこれで合ってるの?」
「合ってますよ、アイシャ様」
イエローが補足している。
「被告人は大切な妻を放置し、1年間も旅に出た上に、内緒で5人目の妻を迎えようとした罪で妻への奉仕刑10年とする」
アイシャさん、何をおっしゃてるんですか?
てっきり街を壊した一件で罪に問われるのかと思えば、そっちの件ですか。
「さて、冗談はこれくらいにしましょうか。お帰りなさいアル」
よかった。冗談だったか。
「ただいま、アイシャ」
「旅はいかがでしたか? 一年間も私をほったらかして出かけたんですから、今日からはいっぱいかまって貰いますからね。覚悟してくださいね」
ニコッと笑いながらもセリフが怖い。冗談では無かったようだ。
「それと、私に仰ることがあるんではなくて」
そ、そうですね。トウカの件について誠心誠意、嘘偽り無く説明した。
「そっちじゃない」
えっ。じゃあ一体何?
「アル君のお嫁さんが増えるのなんて当たり前でしょ。これ見てよ、縁談の依頼が山程来てるわよ。そっちじゃなくて、私の大事なレイ君が帰ってこないんだけど、どう言うことかしら?」
アイシャが指した方には書類の山が20個ほどできていた。アレが全部縁談だと……。
「レイ君が旅に出たって聞いたんだけど(怒)」
「それは俺も詳しくは知らん」
「一体何処に行ったの。大丈夫かしら? レイ君はまだ8歳なのに……」
中身は8歳じゃなかったけどな。
「レイ君は滅茶苦茶強いし、頭もいいから大丈夫さ。そのうちお嫁さんを連れて帰ってくるさ」
「そうかしら?」
アイシャは心配性だな。
「そうさ。俺達の子供なんだ。信じてやろう。それよりもだ。俺はこっちの方が気になってるんだけど」
そう言って、先程の書類の山を指す。
「受けるわけないでしょ。これはお断りするつもりの案件よ」
そうだよな。既に5人も奥さんいるんだから。
「受け入れても良い案件はこっちに分けてるわよ」
「あ、あの。これだけでも100件以上ありそうなんだけど……」
「私達4人の目は通っているから、この中にアルの気に入った子がいたら言ってね。最低5人位選んでくれたら大丈夫だから」
5人って……。一気に倍になる。いらないよ。俺ももうお腹一杯だって。
「あの、本気ですか?」
「当たり前でしょ。レイ君とミリアが次々と国を落としてくるから、各国からの婚礼の依頼に対応する子供が足りないのよ。もっと子供を増やして将来に備えないと……」
なるほど、属国となった国からしたら、親国と婚姻関係を結べば安心できるのだろう。俺への輿入れの依頼と同じくらい、子供たちへの婚姻依頼も届いているに違いない。
そして、大変恐ろしいが聞いておく必要がある。
「ちなみにあと何人くらい必要なの?」
「男の子は後10人もいればいいわ。でも女の子は40人くらい必要かしら」
多すぎーーーーーーーーーーー。
その頃、グランドバルト王国の王座では、
「ラティアよ。もはや、打って出るほか無い。これ以上、占拠されてしまっては人類は滅んでしまう」
「陛下、もう諦めませんか。もう無理ですって」
「何を言うか! 我々が諦めたら人類は滅んでしまうのだぞ」
「もう、仕方ないですね。こうなったら最後の手段しかありませんね」
ガチャ。
ワイズの首に見覚えのある首輪が装着された。
大人しく諦めていればこんな事しなくても良かったのに。
「ワイズ、アル様を主人と崇め、国政をこれまで通り無難に流しておきなさい」
「……」
ワイズは一礼すると王座へと戻っていった。
お父様に言われてこの国に潜伏して早20年。この男の信頼を得るには十二分な時間だったわね。楽な仕事だったわ。王弟をちょっとムチでぶつのと、この男の話を聞いてあげてたら良かったんだからね。
「さあ、これでほとんどの国がアル様のものになったということで、そろそろ私もアル様のお情けをいただきに行きましょうかね。おっと、その前にこの魔剣の偽物は処分しておきましょう」
それじゃあね。哀れなお人形さん。
「ユリア、これからどうすんの?」
「エマ、そんなの決まっているでしょ。お父様に言われたとおり、この子の子供をたくさん産むだけよ」
私の胸では幸せそうな顔した男の子がふがふがと言いながら眠っている。
「そうなんだけどね、私達だけじゃきつくない? お父様が言うには30人だよ」
「一人あたりたったの15人でしょ。余裕じゃない?」
「私達は長生きだから大丈夫かもしれないけど、この子は人間なんだよ? 50年くらいで死んじゃわない?」
「お父様から精力増強の魔法を教わっているから大丈夫よ。あと4年して成人したら直ぐに結婚して子作り始めないとね」
「まあ、後4年もあるし、後で考えればいっか」
「考えなくても発情期がくれば搾り取ることになるんだから、何も考えなくて大丈夫よ」
「そっか。そうだよね、流石、お姉ちゃんだね」
「こら、私はユリアでしょ。お姉ちゃんじゃない。それにしっぽが出てるわよ。早くしまいなさい」
「はーい」
もう、本当に分かってるのかしらこの子は。いつまで経っても子供みたいなんだから。
「旦那様、おかえりなさい」
「おう、ライカ。久々だな。いま帰ったぞ」
「旦那様、お風呂に入りましょう」
帰ってくるなり急に何だ。
「あなた、お風呂よりもお食事になさいませんか?」
今度はセツナが提案してきた。この流れだと……
「違う。師匠は僕と寝るの!」
やっぱりミリアが来るよな。
このやり取りも懐かしいな。
「あら、私は仲間はずれかしら」
「あのー。出来たら私も仲間に入れてほしいなぁ。なんて」
アイシャとトウカまでやって来てしまった。奥さんが全員集まってしまったぞ。俺はどうすればいいんだ。
「これは6Pしかありませんね」
「イエロー、お前なんて――ってお前はレッド。何でここにいる!」
あの場所に残るって言ってたはずだ。
「いやー、流石にこの歳になると二徹はきついですね。眠かったのでちょっと昼寝がしたくて残らせて貰ったんです」
「……」
もう、こいつに突っ込む元気も無いわ。
「突っ込むのは私じゃなくて奥様方にでしょ」
「……」
頼む。消えてくれないか。
「父上、行きますよ。ここにいては6Pが始められないでしょ。あちらからこっそり見守りましょう」
「そうだな。お前はよく出来た息子だよ。それではアル様、頑張ってくださいね」
全然こっそりじゃ無いんだが。
おい、君たち順番をじゃんけんで決め始めるんじゃないよ。まだするなんて言ってないでしょ。
「勝ったー」
ライカが勝ったらしい。半分反則だろ。お前の動体視力と速さがあったら途中で手を変えることできるんだし。トウカも出来るだろうけど、あの子は真面目っ子なのでそんなズルは出来ない。
「さあ、旦那様始めましょうか」
すでに真っ裸である。
い、いつの間に。
「ごしゅじーん。やっと見つけたーーーーーー」
どっがーーーーーん。
急に大声が聞こえたと思ったら隕石の様な物が落ちてきて、城の半分が吹っ飛んだ。
「ご主人、勝手に消えるんだもん。探したぞ」
あっ。何か忘れてると思ったらこいつのこと完全に忘れてた。
隕石かと思われたそれはシオンだった。
「ご主人。置いてかないでよ」
「あーーー。建てたばかりの城が――」
「ライカ、さっきのは反則でしょ」
「師匠、僕は第2夫人だよね」
「トウカさんとおっしゃいましたか、貴方いいお尻してますわね」
「旦那様、早くしましょう」
「あああーーーーーー。うるさーーーーーーーーーい」
お前たち、煩いぞ。俺は旅から帰ったばかりで疲れているんだよ。ちょっとは休ませてくれ。
そして、これだけは言わせてくれ。
「お前たち、頼むから出ていってくれないかな」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
とりあえず、次話で完結を迎える事になります。
毎日読んでくれた皆様、ありがとうございました。
この物語の設定に気づいてくれた人はいましたでしょうか。
日本でもっとも有名な物語をパロディって始めた作品でした。
ヒントは鬼(師匠)、犬(ライカ)、猿(ミリア)、鳥(セツナ)、桃(トウカ)。
当初は20話くらいで終わる予定でしたが、ここまで続けることができました。本当にありがとうございました。
まだまだ、書きたいことは残っているので、カクヨムコン終わったら記載していきます。落ちたらすぐにでも、1次通ったら審査が終わるまでは更新しない方が良いようなので、本審査が終わってから過去の話、レイ君の冒険、他の子供達の話などを書いていきたいと思います。もしくは別に短編として記載するかもしれません。
「ごめんなさい。こういう時(最終話)どんな顔すればいいか分からないの」
「笑えばいいと思うよ」
↑エヴァ(序)見てたんですいません。
それでは、明日のエピローグお楽しみください。
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