第55話 裏魔王登場
「レイ君! こんな所で何やってんの!」
「お父様、ご無沙汰しております。お元気そうで何よりです」
「お、おう。ありがとう。レイ君も元気そうでよかったよ――じゃなくて。レイ君、これなんなの?」
「ああ、これですか。アルバート教の布教活動ですよ」
「アルバート教! 今度は宗教活動を始めたの?」
「はい。モフモフの素晴らしさを広めるためにアルバート教をつくり、現在布教活動中です。教義は『可愛いは正義』です」
いや、そんなに力説されても困るんだけど。
「なんか、俺が教祖みたいに言われてるんだけど……」
「そうですよ。あれを見てください」
な、何だアレは。俺じゃないか。俺が街の中心の広場で左手を掲げて立ってる。
「どうですか? 良く出来てるでしょ。ミリア母様が魔法で作った石像ですよ。まるで本物そっくりでしょ。布教が完了した国にはその証として残すことにしてます」
「ち、ちなみに布教の完了した国ってこんな感じになってるの?」
「ええ、国の代表を始め、殆どの主要な男性達は取込済みですよ。いやーミリア母様は凄いですね」
ミリアが可愛いのは分かるけどさ。流石にあれは無しでしょ。
「レイ君。宗教活動はレイ君のすることだから、訳があるんだろうから百歩譲って良いよ。でもミリアに無理させちゃダメだよ」
「お父様、違います。逆です。僕がミリア母様のお手伝いをしてるんです。母様が父様の為にしてるんですよ。愛されてますね」
な、ミリアが望んでやっている事だと。どういう事だ。何を思ってこんな事を始めたんだ。
「ねえねえ。これマクロ〇の歌だよね」
「そうそう。僕の好きなΔの曲なんだ。ミリア母様にぴったりだよね」
「やっぱり貴方、転生者ね」
「げっ、お前は
「しかも私の本当の名前まで知ってるなんて。貴方、
「ちっ、何で桃花がこっちの世界にいやがる」
「それはこっちのセリフよ。何で死んだ桜がここにいるのよ。しかもイケメンの男の子になってるなんて」
「ははは、いいだろ。僕もやっと男の体を手に入れられたんだ。こっちの世界は最高だぜ」
「なあ、なあ、盛り上がってる所悪いけど、トウカとレイ君とは知り合いなの? 『ももか』とか『さくら』とか言ってたけど何なの?」
「師匠、聞いてくれ。こいつの中身は私の双子の姉の桜なんだ」
「何言ってるんだ。レイ君は男の子だよ」
「そうなんだけど、中に入っているのは桜なんだよ」
えー、トウカが何を言っているのか理解できない。
「アル様、これは恐らく、勇者召喚と似たようなもので、異世界の者の心だけがこちらの世界に来て、レイ様として誕生されたのだと思わますね。これは転生と呼ばれる現象です」
「そんな事があり得るのか」
「はい。2、3人知り合いがおりますので」
俺は驚かないぞ。こいつの事は理解している。何があっても驚いたりしないぞ。
「レイ君は転生者なのか?」
「そうですね。でも、お父様、僕は僕ですよ」
「それはそうだ。レイ君は愛する我が息子だ。転生者だろうが、それは変わらないよ」
抱きしめてあげようとしたが、スルリと躱されてしまった。
「お父様、ありがとうございます。でも近づかないでいただけますか」
「師匠、桜は大の男嫌いなの。女の子なのに女の子が大好き過ぎて、精神が崩壊して死んじゃったのよ」
なんじゃそら、壮絶な死に方だな。
「あの時、私が諦めずにこいつを矯正しておけば、変態の妹として友達を失う事も苛められることも無かったのに、こいつのあまりにもの変態性に負けてしまった事が私にトラウマを与えたのよ」
えー、過去に負けて全てを失ったって、レイ君が原因なの。
「今後こそ、こいつを真人間に育ててやる」
「桃花、俺はもう男の子だぞ。このまま普通に育てば大丈夫だって。普通に女の子と結婚して、国を守っていくんだ」
「そうそう、トウカ、レイ君は凄いんだぞ。めちゃくちゃデカい国を作って、宰相として国家運営してるんだから」
「あまい、あまいよ師匠。桜を舐めたら駄目だよ。この子は絶対、国の事なんて考えちゃいない。女の子とエロい事をすることしか考えちゃいないんだから」
「酷いよ、桃花。僕は至って普通の8歳の少年だよ。そんな事考えちゃいないさ」
「私は騙されないからね。師匠、旅をしている場合じゃないよ。国に戻ってこいつを監視してなきゃ駄目よ」
「俺はまだ、旅を続けたいんだがな。まあトウカという弟子も見つかったし、戻ってもいいとは思うけど……」
「ああ、それなら大丈夫だよ。僕も暫くはミリア母様と一緒に布教の旅を続けるから、一緒に行こうよ」
そうだった。それだよ。
「布教って言ってたけど、どれくらい広まってるの?」
「そうですね。大体20か国くらいは落としましたかね。目標はこの大陸の半分以上をアルノーグルの傘下に治める事ですからね。まだまだですよ」
そう言って、レイ君は大きな地図を渡してきた。
「これ、若しかしなくても、色が付いている所が落とした所なの?」
「そうです。やっと三分の一を制覇したという所でしょうか」
「それはいいですね。旦那様の偉大さを皆知ればいいのです」
ライカ、ちょっと黙っとこうな。お前が入ってくるともっと凄いことになるから。
やばい、もうこんなに俺の国になってしまっている。俺は皆で楽しく暮らせればいいだけなのに、国がどんどんデカくなっていく。
なんかヤバくないか。俺、何もせずにこの世界の覇者になっちゃうんじゃないか。
「ワイズ様、大変です」
「どうした、ラティア。まさか、奴が来たのか」
「いえ、獣人国を挟んで向こう側の国との連絡が一切取れなくなりました」
「なんだと。あっちは剣聖がいる国がある所じゃないか」
「そうなんです。あの国とも連絡がとれません。恐らく魔王に滅ぼされてしまったのではないでしょうか」
「くそ、一歩遅かったか。剣聖はどうなったのだ。このままでは人類は滅亡してしまうぞ」
「いま、ギルドにお願いして、他のS級冒険者を探して貰ってます」
「残り5人のS級か。早く見つかることを祈るしかないか」
クソ、アルバートめ儂の計画を尽く潰しおって。許せん。必ず倒してやるからな。
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