第51話 一方その頃
グランスバルト王国 冒険者ギルド元老院では、その頃、
「剣聖が魔王に討たれたらしいぞ」
「くそ、魔王め。やっとラングリットが出ていったから実権を取り戻したと言うのに、我がギルドが抱えるS級を3人も奪ってだけでなく、剣聖まで潰しおって」
「なに、心配するな。所詮、剣聖は残ったS級の中でも最弱の者、残りの5人は剣聖を遥かに凌ぐ化け物達だ。如何に魔王とて簡単には倒せまい」
「そ、そうだよな。剣聖は所詮、最弱だからな。大丈夫だよな」
「ただなぁ……残りのS級の奴らは何処にいるのかさっぱり分からんからな。どうしようもないよな」
「それな。あいつら自由人だからな。言う事聞かないし」
「そうそう」
「はっはっは。もう笑うしか無いな。はぁ……」
アルノーグルでは、その頃、
「お母様、お父様は元気にされてますかね」
「あの人の事だから、そろそろ新しいお嫁さん候補を見つけてる頃じゃないかしら」
「まあ、また新しいお母様が増えますのね。帰ってくるのが楽しみですね」
「そうね。モニカもそろそろ5歳になりますね。そろそろ国政の仕事を手伝ってみますか?」
「いいんですか! やってみたいです。お忙しいレイお兄様のお手伝いをしたいと常日頃から思っておりました」
「そう。では、明日から早速手伝ってもらう事にしましょう。レイ君には話しておきますから、明日の朝から執務室においでなさい」
「はい。お母様」
「セツナ、師匠はまだ帰ってこないのかな」
「ミリア、まだ一月程度しか経っていないわよ」
「でも、寂しいよ」
「そうですわね。私も同じ気持ちですよ。でも私には子供たちを守る使命があります。追う事はできませんわ。でもあなたは違うでしょ」
「追いかけてもいいのかな?」
「それも良いかもしれませんわね。でも、私はミリアにしか出来ないことをして、あの人を助けてあげたら良いと思いますわ」
「私にしか出来ないこと……何かあるかな?」
「さて、それは私には分かりませんことよ、この国には頼りになる知将が一人おられるじゃないですか。あの方に相談されてみてはいかがですか」
「ありがとうセツナ。彼のところに行ってみる」
「ミリア、頑張ってね」
「うん」
「うーん。人口の増加はますます好調。商業、産業の方も好調だね。後の課題は人材育成かな。文官と将軍職を誰かに与えて、それぞれ副官を数人育ててもらう必要があるな」
「レイ兄ちゃん。何をぶつぶつ言ってるの? 今は赤ちゃんの役なんだから、喋ったら駄目でしょ」
「カナメ、ごめんよ。ちょっと考え事してたんだ。バブバブ。お腹すいたでしゅ」
くっ。またも赤ちゃんに逆戻りか。屈辱だが妹の為だ仕方ない。最高の赤ちゃんを演じて見せよう
「もう、レイちゃんはさっきもおっぱい飲んだでしょ。もうボケちゃったの」
ライカ母様のおっぱいなら最高なんだけどな、妹も平らなおっぱいじゃなんとも思わんな。それでも、俺は全力でやってやるぜ。
「おぎゃあ、おぎゃあ。おなか空いたよー」
「もう、仕方ないでしゅね。はい、おっぱいをどうぞ」
「うまうまうま。ママお腹いっぱいでしゅ」
レッドがいなくてよかった。あいつにこんな所を見られたら自害したくなる。父様も大変だな。あいつに寄生されて。
この国のことは俺がしっかりと見ていてやるから、羽を伸ばしてきたまえ。父様。帰ってきたらまた、どうせ地獄が始まるんだからな。相手してなかった分、激しくなるぞ。分かってるのかな、あの人は。
「ねえねえ、ツヴァイ兄ちゃん。バルス君とサーシャちゃんが最近いないんだけど、何処に行ったの?」
「さあな。どうせライカさんの修行の旅にでも連れてかれたんだろ。あいつ等も大変だな」
「えー。いいな。アリアも行きたかった」
「お前たちは仲良しだもんな。でも、あいつ等の足の速さには付いていけないだろ」
「そうだけど……」
「それじゃあ、アリアは兄ちゃんと一緒に修行して、帰ってきたバルスとサーシャを驚かせてやろうぜ」
「修行、やる。私やるよ。ミリアママみたいな土の魔法使ってみたい」
「そうだな。魔法のことはセツナさんが詳しいからな。聞きにいってみよう」
「うん」
グランスバルト王国王城では、その頃、
「なあ、ラティアよ」
「なんでしょうか。ワイズ様」
「剣聖はまだ来ないのか」
「はい。そろそろ来てもいい頃なんですが……」
「このデーモンスレイヤーを使いこなせるのは剣聖しかいないのだ。何としても来てもらわねば困る」
「承知しました。もう一度、ギルド経由で依頼をかけてみます」
「うむ。頼んだぞ」
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