第37話 シルバニアン王国第8師団VSギランカ盗賊団

「おい!大丈夫か!」

 エルジュを揺すっても、寝息を立てているだけだ。


「くそ!ココミもか!」

 馬車の中では、エルジュと騎士のココミが眠っている。


「師団長!眠り粉です!霧に紛れて撒かれています!」

 御者の騎士が叫ぶ。馬も眠ってしまい馬車は停止した。


「動けるのは、俺とサリスとワイドとイズマか。」

 俺は動ける騎士達を見る。


「霧が晴れてきましたぜ。ついでにお客もいっぱいだ。」

 御者をしていたワイドが、ひきつった笑顔で言う。森の中から、30人ほどの武装した男達が出てきた。


「おうおう、騎士様この中に黒髪の男の子はいるかい?」

 武装した190センチはある、男が話しだす。


「お前は、ギランカか。お前達は、ギランカ盗賊団か!」

 ギランカ盗賊団。シルバニアン王国だけでなく、ロゴダイン帝国の領地にまで指名手配されている盗賊団だ。


 ギランカは、盗賊団のボスで、500万エーンの賞金首だ。


「騎士様は、第8師団で間違いないですよね?なら当たりだぜ!」

 ギランカは嬉しそうに馬車を見ている。


「帝国と手を組んだのか!」


「ガハハハ!俺達が国何かと手を組む訳ないだろ!あるお方に指示されてるだけだよ。」

 パリスが叫ぶとギランカ達は、笑い出す。


「誰だそいつは!」


「答えるがバカめ!お前らいくぞ!黒髪を拐ったらさっさと逃げるぞ!」

 ギランカ盗賊団が襲い掛かってきた。皆騎士達を無視して、馬車に向かって行く。


「騎士様は強いからな。3人が当たれよ。」

 ギランカは、からかう様に指示を出す。盗賊3人が剣で斬りかかってきても問題は無い。問題は、ギランカと人手が足りないことだな。


 ギランカは、俺に斬りかかってきている。実力があり、他の盗賊達の様にすぐには倒せない。


「馬車だ!馬車を燃やせ!」


「ファイヤーボール!」

 盗賊達が唱える。馬車に向かって火の玉が着弾した。


「馬車がやられる。」

 馬車の屋根が燃え始めた。


「あらあら馬車が燃えちまった。ガハハガハハ!」

 ギランカは、楽しそうに剣をふる。


 受けるだけで精一杯だ。


 ちゃくちゃくと、馬車は燃えている。


「くは!」

 魔法を唱えていた盗賊が倒れた。


「すみません!」

 ココミがエルジュを抱えて矢を放っている。


「よし!後方は任せる!」

 ココミの弓矢があれば、後ろの奴らはすぐ終わる。


「あれが目的の子ですか。本気で行きますよ。」

 ギランカの持つ剣が赤く光り、炎を纏う。炎の魔剣がパリスを襲う。


「お前ら下がれ!」

 騎士達にココミのいる所まで、下がる様に指示を出す。俺の剣では、この攻撃に長く耐えれそうもない。


 盗賊達も倒されて、ギランカの他に3人まで、減っていた。魔法を使っていた盗賊もココミが全て倒している。ココミは、エルジュを起こそうと頬を叩いている。


「あなたの剣もこれで終わりですよ。」

 ギランカが剣を振り下ろすと、パリスの剣が砕け左肩に炎の魔剣が振り下ろされた。肩の肉が抉れている。


「師団長!」

 騎士達が叫ぶがパリスは、床に倒れ動かない。


「ガハ!次はお前らだ!」

 ギランカが騎士達に接近し、剣を振う。騎士達が剣で受けるも、一撃で剣が砕け斬られてしまった。


「お嬢さん。その子を寄越しなさい。」

 ギランカがココミに近いてくる。


「黙れ!私がお前を倒す!」

 ココミが弓矢を向けるがギランカは、余裕の表情だ。


「そんな物私に効きませんよ。」


 ココミが矢を放つ。


「ほらね?」

 ギランカが持つ魔剣に矢が当たると、矢は燃えてしまった。


「この魔剣は、炎魔法Lv2が付与されています。火魔法とは違うのですよ!」

 ギランカは嬉しそうに剣を掲げている。


 ココミは、青ざめた顔でギランカをみている。涙を流し人生を走馬灯のように思い出しているのだろう。


「さようならお嬢さん。」

 ギランカ剣を振り下ろそうとした瞬間。


「おはようございます。」

 一人の少年が起床した。




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