第13話 父は説明する
ギュラルさんとアイントさんに説明を求められ、父は話し出す。
30階層のボスモンスター、シャドウリザードから魔鉱石がドロップして、それが再生の魔鉱石だったと説明した。
「それが2つもか?」
ギュラルは、不思議そうに聞く。
父はうなずく。二人は考えるように、キーホルダーをいじっている。魔力を込めたり、強く握ってみたりするが、何もわからない。
「カイルの息子エルジュがいるって事は、関係あるんだよな?」
ギュラルが聞いてくる。
確かに部外者の僕がいたら不思議に思うよね、
「いや、関係ないぞ?」
父はとぼけて言う。目が泳いでいるけど。
「そうですね。この針金が関係するのでしょうか。魔鉱石の能力を使うには、媒体があれば強化できますからね。」
アイントが真剣にキーホルダーを睨み付けている。
うん。正解。普通の魔鉱石は、杖や剣などを媒体にして、武器になるのだ。僕の場合は、キーホルダーだけど。
「エルジュ君の天職によるものでしょう。カイルさん、エルジュ君ありがとうございます。」
アイントは立ち上がり頭を下げる。
「それでカイル。いくら払えば良いんだ?2億エーン払うか!右手があれば3年もすれば余裕で稼げるぜ!」
エルジュは右手に力を込めて話す。アイントも余裕で稼げると言いたげにみている。
いくら【再生師】に頼んでも必ず再生するとは限らない。有名な噂では、貴族の令嬢が眼の再生に10回以上失敗した話が有名だ。【再生師】の技量次第で再生出来ないこともあるのだ。
「いや金なんていらないぞ?」
父は普通みたいに話す。原価は魔物石だけだから大金は、掛かっていない。むしろ僕の実験に使ってしまったから、お金を払ってもおかしくない。
二人は納得せず父に言い寄ってるが。
「カイル分かるだろ?再生の魔鉱石なんて売れば1000万エーン以上は確実だ。杖に加工するだけで5000万エーン以上掛かる。それが使えるか試すのに3000万エーン以上だ。そこから売りに出されたら、倍の2億エーンは確実に越える。しかも【再生師】なしで再生できるなら、貴族が保険で買ってもおかしくない。そしたら5億エーン以上の値になっても買えないだろ!」
凄いな。そんな価値のあるものだったのか。考えてみれば確かに納得できる。【再生師】なら確実に成功するとは限らないが、魔法道具として、再生の杖でもあれば、お金持ちなら欲しいだろうな。しかも2つも父は、持ってきたのか。
「どうしてもカイルは受け取らないのか。ならエルジュ!お前がこれを加工したんだな?それならエルジュに5000万エーン渡す。いいな!」
ギュラルはキーホルダーの針金を見せて、言ってくる。思わず喜んで!と言いそうになるが、ダメだろうな。
「いえ、いりません。僕はまだまだ未熟なので、そんな大金必要ではありません。父が取ってきた物なので、父に渡してください。」
いやお金は欲しいけど、信用を築いたほうが得になりそうだな。
二人は考えこむ。お礼は、絶対受け取らせるつもりだ。
何か良い答えは、無いものか。
う〜ん。ダンジョンだな。
「もし良かったらですが、僕のレベル上げを手伝ってもらえませんか?父と二人だと、深い階層には危険なので行けませんが、二人がいてくれたら安全にいけるのですが。」
お金よりも、ダンジョンでレベルアップと魔物石を取ってきたほうが得になるだろう。稼ぐのは、強くなってからだ。
「そんなことでいいのか?」
二人は拍子抜けしている。
二人は怪我をする前は、2等級冒険者だったが怪我でランクが下がってしまったのだ。
冒険者には、等級制度があり一番上が1等級で下が5等級だ。初心者は、5等級から始まるのだ。
「よし!そんなことで良いなら任せろ!10階層までなら余裕で行けるだろうさ。1日は、感覚を戻すのに必要だから1週間みっちり鍛えてやるぞ!魔物石もカイルとエルジュに全て渡す!それでも良いなら良いぞ!」
ギュラルは笑顔で話す。一週間タダ働きだけどいいのか?アイントも笑顔でうなずいている。
「わかった。それじゃ明日の朝からダンジョンに行ってみるか。」
父もしょうがないと納得してくれた。僕が一番得をしたな。
「それでは私は、事務員を辞めてきます。明日朝8時集合でよろしいですか?」
アイントはさっさと、事務員を辞めるみたいだ。
「わかった。じゃあ俺は、ダンジョンに行って試して来るぜ!」
ギュラルは、ダンジョンに行って右腕を確かめに行くみたいだ。
「わかった。明日はよろしく。それと魔鉱石の事は、言わないでくれよ。」
カイルは二人に言う。二人は僕の天職について、追求しない様にしてくれるみたいだ。ありがたいな。
話も終わり個室をでて、ギルドをあとにする。
「ダンジョンに行ってレベル上げでもするか!」
僕は父と共にダンジョンへ向かって行った。
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