第7話:使用交渉
地元から逃げてきて10日間、ホテルに住みながらバスコンが届くのを待った。
その間に運転の練習をさせてもらいながら、必要だと思うモノ以上の買い物をしてしまったが、全部前払いで買い置きしてもらった。
練習用のバスコンを貸してくれてる販売会社に、買った物は置かせてもらえるように交渉した。
同時に、廃村と廃神社の持ち主を調べて、購入交渉をしたのだが……
「何も知らない奴に大切な神社や廃校を使わせる訳にはいかん」
廃神社と廃校の持ち主は、先祖代々神社を護っていた一族の爺さんだった。
独立宗教法人の資格を持っているから、それを狙う奴からあくどい真似をされて、人間不信になっていた。
病院のベットから動けない状態なのに、気力だけで怒声を発している。
もう一族に生き残りがいなくて、掃除も出来ないようだ。
俺のような50を越えた独り者では、後を任せろとも言えない。
「私がどんな使い方をするのか、元の氏子さんに見張らせてくれればいいです。
それで許せないと思ったら、叩き出してくれればいいです」
「もうあの神社の事を大切に思ってくれている氏子衆なんていない」
爺さんがとても寂しそうにつぶやいた。
「だったら私が費用をお渡ししておきますので、探偵に調べさせてください」
「そんな金なんかねえよ」
脱税目的に宗教法人を手に入れようとする極悪人に騙されたといっていたよな。
「費用は私が預けておくお金から自由に使って下さい。
失礼かもしれませんが、私も弟に命を狙われていて、隠れないといけないのです」
俺はそう言って、某銀行の帯封で固められた1000万円の束をおいた。
「こんな金があるのなら、ずっとホテルで住めばいいだろう」
爺さんが憎々しげな表情を浮かべているが、気にして引くわけにはいかない。
「私には小さい頃からの夢があって、近衛騎兵だった大叔父のように、颯爽と馬に乗りたかったんです。
この歳になるまで金に余裕ができなかったのですが、ようやく馬が買える金を手に入れましたが、それを表に出すと弟に殺されてしまいます。
それに、今から乗馬を覚えるのも難しい。
だからせめて走れなくなって殺処分にされる馬を引き取ってあげたいんです。
神社には毎日掃除をしてお水とお供えをさせて頂きます。
元の校舎には出入りしないようにします。
校庭は馬達の運動場に使わせてほしいんです、どうかお願いします」
「分かった、今から来年の春までお前のやる事を見てやる。
今言った事の少しでも嘘があったら、この金を使って訴えてやるからな」
爺さんが俺の渡した1000万を掴んで言い切った。
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