第3話:身勝手な弟の殺意
俺は仕手で勝った1200億円のうち200億円を、新たに納税用に作った決済用普通預金に入金した。
本当なら、普通預金よりも利率が高く設定され、しかも利息が非課税の納税準備預金に入金しておきたい。
しかし問題もあって、四大銀行だから大丈夫だとは思うが、万が一銀行が倒産した場合は、納税準備預金では預金保険制度の対象になるのが1000万円までなのだ。
200億円の納税義務があるのに、銀行が倒産して預金が消えてしまったら、俺は心身が麻痺してしまうだろう。
1200億円の利息を重視するのか、それとも銀行倒産の可能性を回避して心の安全を取るのか、これはそういう問題だった。
預金を引き継ぐ女房子供がいるのなら、利息の付く預金や定期にしていただろうが、54歳で独り身の俺には利息など不要だった。
銀行が倒産しても上限なしに預金を保証してくれる利息のつかない普通預金、決済用普通預金口座を、自由に使う心算の200億円用に5銀行で5口座作った。
これで何の心配もいらないと思っていた。
全てを終えて、明日から養老馬牧場を始めるための土地探しをしようと思っていたのに、そうはいかなかった。
「自分、随分羽振りがいいようだな、金貸してくれや。
5000万、いや、3000万でいいからよ」
こいつ、探りを入れているのか?
俺はこいつが同居していた頃から宝くじを買っていたから、総取りを狙って同じ数字を買うのも知っている。
38億円がキャリーオーバーした次の回で5口の当選が出て、しかも母親から俺の様子がおかしいと聞いて、俺が42億当選しているかもしれないと考えたのだろう。
元から身勝手な奴だったが、隣にいる女とくっついてから、極端に悪くなった。
下手な答え方をしたら、殺されるかもしれない。
「あのなぁ、商売の方が極端に悪くなっているんだ。
老後の事を考えたら、100万200万でも貸して返ってこないのは苦しいんだ。
前にも言ったが、借りた金を本気で返す心算があるのなら、毎月1000円でも2000円でも返すもんだ。
それを1円も返さず、女に10万もする犬を買い与えるような奴に、びた一文貸せるかよ、何度も同じことを言わせるな。
どうしても貸して欲しいのなら、保証人になってくれる人間を連れてこい」
さて、この場で俺に襲いかかってきたら万事休すだな。
親戚の兄貴や叔母に泣きついて味方につけるのは、こいつの常套手段だから、そうしてくれれば時間を稼ぐことができる。
母方の祖父が不審火で焼死した時は、屑の叔父が遺産目当てに放火殺人した可能性があると怒っていたが、あの頃には弟にもまともな所があったんだがなぁ。
今ではあの叔父と同等の屑に成り下がっているな。
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