第4話:失踪
その場で殺し合いになる可能性も考慮していたが、弟は親戚の兄貴と叔母を味方につけて俺から金を集る方を選んだ。
前回金を集った時には、その方法で親戚中を巻き込んで傷つけ合ってようやく贈与された、先祖代々の土地を売らされている。
同じ方法でも十分俺から金を強請り取れると考えたのだろう。
「あいつに渡す金を銀行からおろしてくる」
俺がそう言うと、母は心から安堵しているようだったが、元々は何度注意してもベラベラと他人に情報を流す母の愚行が原因だ。
俺の仕事には守秘義務があると何度言っても平気で話す馬鹿な母だ。
今日までは長男の責任で面倒を見ていたが、俺よりも弟が可愛いのなら弟に面倒を見てもらえばいい、最後は保険金をかけられて殺されても自業自得だ。
まあ、その前に書類を偽造して俺名義の家屋敷を売るだろうが……
失踪宣告が認定されるのが7年か、それまで母は殺されないでいられるかな……
「じゃあちょっと行ってくる」
母親に不審に思われないように、できるだけ何気なく自転車で出て行く。
万が一直ぐに母が弟に連絡したら、車で追いかけられる。
車が入り込めない旧村の細い道を使って、駅以外の場所に逃げる。
駅だと見張られている可能性がある。
俺は全然連絡していなかったから、弟が今何の仕事をしているか分からない。
従弟を頼って転職していたら、暴力団の5次団体で日雇い作業をしているだろう。
そいつらを仲間に引き入れている可能性も皆無ではない。
俺はママチャリを全力でこいで、隣りの市にあるショッピングセンターに行った。
「金は惜しまない、高速を使って岐阜まで行ってくれ」
俺の住んでいるのは関西の某市だが、電車を使わずにタクシーで岐阜にまで逃げるとは誰も思わないだろう。
住民票を移さず、携帯も電源を切ったままにして使わなければ、居場所を弟に知られる事はないと思う。
金はあるのだから、現金だけを使って逃げれば、失踪届を出して調べたとしても居場所を知られることはないと思う。
問題はどこに隠れ住むかだが、数年前に山歩きをしていた頃に見つけた廃村に隠れれば、誰にも見つけられないだろう。
正直もう誰にも関わりたくないというのが本音だ。
母の愚かさにも辟易したし、弟の殺意と欲望の籠った眼が忘れられない。
もう二度とあんな目で見られるのは嫌だ。
手に入れる事のできる武器は全部、金に糸目をつけずに購入する。
それを全部積める車両も購入する。
問題があるとすれば、俺が30年近く車の運転していない事だが……
廃村に隠れて時々買い物に街に降りるくらいなら大丈夫だろう。
廃村には生活に必要なモノは全部持ち込まなければいけないから、バスキャンピングカーを購入した方がいいだろう。
問題は俺の免許が8トンまでの制限がある事だが……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます