第5話 筋肉対決
その日、
最大最強の素人主婦の異名を持つ褐色緑髪の小森マイ。
275センチという超長身を活かしきり、この『
彼女に挑むのが満を持してついに『
これで盛り上がらないわけがない!
なおこんな無茶な企画を受けてくれるのかダメもとでオファーしたところ、揃って大丈夫ですと即答されスタッフ全員ずっこけたというエピソードはもはやどうでもいい。
もちろん民放のことであるから完全に連続というわけにはいかない。CMを挟むため、ステージはいくつかの『ピリオド』にまとめられ、3分間の休憩(CM)を入れる。2時間ライブといいながら、実質の競技時間は1時間24分だ。
夜7時。
グリーンスタジオにカクテルライトが灯る。昼間のような明るさになったステージには今回の特別司会、お笑い界の帝王
「「
この二人にわざわざタイトルコールさせる時点で
「さーはじまりましたで淳和ちゃん。最強の筋肉美女を決める頂上対決ということですが!」
「そうですねまぐろさん。知名度では椥辻ソフィーリアさんが圧倒していますが、そのソフィーリアさんが今回は挑戦者ポジションですからね」
「あー、そやな。淳和ちゃん。ぼくらもソフィちゃんがデビューしたての頃から知ってるけど、まあすごかったよな」
「はい、オリンピック選手が驚くぐらいの身体能力でしたからね」
「しかも今やハリウッド女優やもんな。演技もアクションも出来るってことでこれから5本の契約があるそうやで」
「私が聞いた話では10本は確定だそうですよ」
「うっわーまじかー。やっぱデビューしたての時にお誘いしといたらよかったー」
「え、何にですか?」
「そんなん決まっとるやろ。新喜劇や」
どっ!
オープンスタジオは公録ではないので客はいない。笑い声は単なる
「そしてディフェンディングチャンピオンが小森マイちゃん!」
「はい、筋肉界では知らない者はいないというか、とにかく目立ちますよね彼女。特に身長が」
「せや。普通の人間の倍あるわ。面積は2乗やから4倍。体積は3乗やから8倍や。中卒やけど数学は強いで」
「義務教育の星ですね」
「さて二人はすでにスタート位置にスタンバってるようやで。実況の
『はーい、まぐろさん! こちらは第一ピリオドステージ。ここは7つのアクションエリアで構成されています』
巽南秤は元オリンピックのフィギュアスケーターであり、今はスポーツキャスターに転向している。
『この第一ピリオドは5段の足場の斜面を飛ぶフィフスエレメント、逆回転するローラーの山を越えるストーンズ、トロッコの要領でバランスを取りつつ滑走するバルキリー、左右に揺れるお邪魔ポールを避け魚の骨のような足場を抜けるボーンダッシュ、離れた二本の空中レールのバーを握り、途中でジャンプで乗り換え滑り降りるバーライド、5枚の重い壁を押しながら進むパワーラン、今回最終重量は1トンです。そして最後は逆バンクになっている壁を登りきるヌリカベ! 実に10メートル!』
「うっわー、これだけで今までの
『はい、そうです。しかもこの後、第2ピリオド、第3ピリオドと続きます』
「今回の特別ルールでは第4ピリオドまでの平均点と、最終のファイナルステージでの点数の合計により勝者が決まります! なお、挑戦順は第1ピリオドはチャレンジャーの椥辻さんからですが、その後は前ピリオドの点数の低かった方が先にスタートします」
「なるほど、各ピリオドで仮に失格してもファイナルステージでの逆転もあり得るってことでんな! 考えましたなディレクター!」
「さあ、いよいよ注目のお二人、最初の挑戦です! まずは挑戦者椥辻ソフィーリアさん! オンユアマーク!」
金髪の爆乳美女。椥辻ソフィーリア18歳がスポットライトに浮かび、スタート位置に立った。
翌日。
「おー、マイちゃん。昨日のテレビ見てたでー。面白かったわー」
「ありがとう! シゲさん!」
最近の日課になった夜明け前のランニングで、市場から魚を仕込んできたシゲさんと挨拶をかわす。
いつものことだ。
いつもと変わらない、朝。
◇◇◇◇
椥辻ソフィーリアが気になる方は、拙作『姫とおっさん』をお読みいただければ幸いです(宣伝)。
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