第13話 梨子と真美…長良川より愛を込めて

4月、梨子は俊介とめでたく結婚した。梨子のお腹の中には2人の新しい命が宿っていた。


梨子から真一宛てに手紙が届いていた。


梨子『しんちゃん、ご無沙汰しております。去年、堀川家へ突然おじゃまさせていただいてから、私はしんちゃんの心強いフォローが入って、無事俊介と結婚致しました。しんちゃん、本当に本当にありがとう。俊介も嬉しがってたよ。結婚式に出席してほしかったけど、しんちゃんは“旅”という『彼女とデート』で忙しいみたいだったから、あえて招待状は送りませんでした(しんちゃんの言うとおりに(笑))。そして、私のお腹の中には新しい命があります。お父さんの気持ちも考えて、前向きに生きていきます。またお近くにお越しになられた際は、どうぞお立ち寄り下さい』


梨子は、俊介と名古屋で幸せな生活を送っていた。


その頃、梨子と俊介は長良川に来ていた。


梨子「俊介、しんちゃんに話したのはどうしてだったの?」

俊介「ん? 梨子がいとこと会うって聞いたとき、オレのプロポーズのことで相談したのかな?…って思ったんだ。実際はそうだったんだけど、梨子に『トラウマ』があったなんて、ちっとも知らなかった。真一さんからは何も聞いてないけど、梨子がこの前教えてくれたから、納得したんだ」

梨子「そうだったんだ。でも優しいでしょ、しんちゃん(笑)」

俊介「うん。良いいとこだな、梨子」

梨子「うん。でも、しんちゃんからは『俊介について行け』って言われたから…」

俊介「そうなんだ(笑) 真一さん、そこまで言ってたか…(笑) 責任重大だな…」

梨子「お願い、俊介」

俊介「わかりました…」



また真美はというと、長良川で真一達と話した後、名古屋に戻って幼なじみのりくに会いに行っていた。

真美が陸の家のチャイムを鳴らす。


真美「陸ぅ~、いるの?」

陸「真美か?」

真美「うん。何してるの?」

陸「何もしてない。暇だから寝てた」

真美「暇ならちょっと、出かけない?」

陸「わかった…。着替えてくるから少し待ってて」

真美「うん」


しばらくして陸が着替えて玄関先に戻ってきた。


陸「で、どこ行くの?」

真美「保育園」

陸「はぁ? なぜ?」

真美「いいから…」


真美と陸は保育園へ向かう。


陸「真美、何かあるのか?」

真美「別に…。陸と一緒に行ったって、別にいいでしょ? 幼なじみなんだから…」

陸「お前、何か企んでるのか?」

真美「…黙ってついてきて❗」


陸は真美に言われるがまま、保育園へ向かった。

2人が保育園に到着した。


陸「着いたぞ。懐かしいなぁ、真美とここで出会ったんだよな?」

真美「そうだよ。なぁ、陸」

陸「何?」

真美「あんた、彼女いないよね?」

陸「はぁ? いるわけないだろ❗ いたら今頃昼寝もせず、お前ともこうやって保育園にいないわ。真美、何か様子が変だぞ」

真美「…………」

陸「……………え?」

真美「…………」

陸「真美?」

真美「私、どうしたらいい?」

陸「え?」

真美「私、陸と保育園からずっと一緒じゃんか」

陸「そうだ」

真美「私、これからどうしたらいい?」

陸「『どうしたらいい?』って、どうしたらいい?」

真美「どうしたらいい?」

陸「………、真美」

真美「何?」

陸「………オレと付き合うか? オレ、真美が保育園の時から好きだ」

真美「陸…」

陸「いろんな女子を見たけど、オレにはお前しかいないみたい。『幼なじみ』には勝てないわ。オレと付き合ってほしい、オレの初恋の人」

真美「陸…ありがとう。私の初恋の陸、こちらこそよろしくお願いします」


真美は陸と抱き合った。真美と陸の15年越しの恋が実った瞬間だった。

真美もこうして、幼なじみの陸と結ばれ、真美も新たな一歩を踏み出していた。

それから半年が経ち、真美は高校を卒業し、短大へ進学していた。幼なじみの陸も、真美と同じ短大へ進学していて交際は順調だった。



こうして梨子と真美は、長良川から幸せを運んできたのだ。長良川より愛をこめて…。





一方、優香と再会してから半年後、真一は会社を辞めたと同時に、交際していた長島と中々会えることが出来ず、すれ違いが生じ、自然的に別れたのだった。



会社を辞めた真一は、ハローワーク(職業安定所)で就職活動を始めたと同時に、『彼女』である旅に出た。今まで行った事がなかった北海道へ向かう。


南駅から普通電車を乗り継ぎ、『急がない旅』として北海道へ旅に出たのだった。

車窓を眺めたり、相席になった乗客とのふれあいがあったりして、真一は一人旅を満喫していた。


真一は今日も日本のどこかで『彼女』とデートしているのだった。










(完)

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不器用な男~旅情編『トラウマの原点の秘密』 まいど茂 @shinchan17

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