第24話:戦力拡充

 俺はリアナを護るためにできる限りの手段を取った。

 戦争になっても負ける気はしないが、多くの人が死ぬような事態になれば、心優しいリアナは心を痛めてしまう、だから戦争にならないように努力した。

 金に糸目をつけずに、王都内だけでなく、王国内外から傭兵団と冒険者を集めて、王都屋敷と領地を護る戦力を整えた。

 王家が彼らを雇う前に確保したという事だ。


「兄上様、このような事をすれば、王家から謀叛の疑いをかけられませんか」


「その点は大丈夫だよ、事前に社交界には王家がラゼル公爵家を奇襲する心算だという噂を流しておいたからね。

 社交界では、それに対応するためには仕方がないという流れになっているよ」


 俺やリアナは重病という建前だから、王家や他家の使者には全く会っていないが、対応してくれてる王都家老から色々と報告は受けている。

 王家の使者の中には、王家の権力を笠に居丈高な態度を取るものが多かったが、彼らのその言動を全て社交界に流していたから、王家がリークン公爵家に難癖をつけて莫大な家財を奪おうとしているという噂は、すんなりと受け入れられている。

 なん言っても俺の宝石オークションでの利益は莫大で、王家がそれを奪おうとしているという噂は、普段の強欲な行動もあいまって信じられやすい。


「傭兵と冒険者の募集は家臣に任せればいい、私達は領民のための築城と食糧生産に励もうか、リアナ」


「はい、お兄様」


 莫大な金があるから、国中の食糧を全て買い占めてしまう事もできるのだが、そんな事をすると民の恨みを買ってしまうから、食糧は自分で作る事にした。

 この国の土地はとても貧しくて、種を一つ蒔いても収穫時には三にしかならない。

 日本や中国が基準なら、種を一つ蒔けば二十から四十になって収穫できるのに、本当に中世ヨーロッパの痩せた土地を再現しているので嫌になる。

 ただ俺には莫大な魔力と魔術があるので、力技で成長を促進する事も収穫量を増やす事もできるので、食糧生産に専念した。


「私は全領地を飛び回り、魔術で収穫量を増やし収穫時期を早めなければいけない。

 だから準備は皆にやってもらわなければいけない、分かるな。

 やってもらう事は、魔境から落葉を集めてきて農地に混ぜてくれる事だ。

 魔境の落葉には豊富な栄養と魔素が含まれている。

 それを使えば、僅か一日で小麦や大麦やライ麦を成長させることができる。

 では後は任せるからな」


 俺は領民にそう言って、リアナと一緒に次の領地に向かった。

 単に領地の民を喰わせるだけなら、ここまで急ぐ必要もなければ量も必要ない。

 だが、食糧を輸送する時に必要な護衛の傭兵や冒険者を俺が集めてしまったから、輸送費が高騰して食糧も高くなってしまっている。

 これを好機と悪徳領主が護衛不足の輸送隊を襲撃したり、悪徳商人が食糧を買い占めて高値誘導しているから、王都などで食糧が高騰して民が困っているのだ。

 これを放置してしまうとリアナが哀しむから、食糧増産に励むことになる。

 こんなに優しいリアナを悪役令嬢にして断罪したのはどこのどいつだ、絶対に許さんからな。

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