第25話:魔力器官の進化

 俺の魔力は東洋医学の経絡経穴に従って流す事で、常識外れの速さで使えるし、一日魔力発生量も桁外れの量になっている。

 この世界の考え方では、魔力は体内の魔力器官で作られ蓄えられることになっているが、俺は更にその考えを進めて、経絡経穴全てで作り蓄えられると思い込んだ。

 前世で俺が読んだラノベや鑑賞したアニメでは、想像力が現実になるという設定があったので、そう信じ込んだのだ。


 この世界の常識では、魔力がある人間は体内に魔石を持ち、その魔石が魔力器官で、魔石で魔力を作り蓄えているというのが常識だった。

 実際に魔力を持つ魔獣からは魔石を採集することができる。

 その魔石に含まれる魔力の量によって、魔核、魔石、魔晶石、魔宝石と呼び名が変わり、取引される値段も桁外れに高くなる。

 闇社会の人間のなかには、死んだ人間から魔石を取り出して売買する者もいる。


 だが俺は、全ての経穴に魔石があって、そこで魔力を作り蓄えていると信じた。

 しかもその魔石は魔法袋仕様で、無限に魔力を蓄えられると信じ込んだ。

 心から信じたモノを魔力で実現することができる世界。

 この世界はそういう世界だったと証明できたと同時に、無敵の力を手に入れた。

 その力を使えば、単なる宝石を創り出す事など朝飯前だった。

 王都にいた時同様に、宝石オークションをロスリン侯爵領で行った。


「兄上様、私達が旅もせずに領地と王都を行き来するのは問題ではありませんか」


 リアナの心配も当然なのだが、俺は気にしない事にした。

 そんな些細な事を気にするよりも、国際関係を気にしなければいけなくなった。

 俺が王家と反目していると知って、周辺国の使者が接触を図ってきている。

 俺が王都と領地を移動している魔術が、転移の魔術なのか、それとも隠形魔術と高速移動魔術の併用なのか、王家も周辺国も躍起になって調べているだろう。

 教えることなく実際に使う事こそ、彼らに対する牽制になる。

 その事を丁寧にリアナに説明してわかってもらった。


「そんな事よりも、リアナにはもっと大切で気にしなければいけない事があるよ。

 領民の食糧を確保するために、収穫量を増やし成長力を早める魔法陣を完成させて、全ての民を救う事だよ。

 権力争いに力を注ぎ、領民を苦しめる領主を退治するのなら、その貴族領に住む民を飢えさせないだけの、食糧を確保しておかないといけないのだよ。

 私が奇病にかかって死んでしまったら、領民を飢えさせない責任はリアナが負うことになるのだからか、リアナがやれる食糧増産魔術を早く完成されるのだ」


「はい、分かりました、兄上様」


 俺が最初から最後まで行って、食糧増産魔法陣を創り出す事は可能だ。

 だがそれではリアナが成長もしないし、リアナの自主性もなくなってしまう。

 俺の想像力ではなく、この世界の常識の範囲で、リアナに食糧増産術を完成させて欲しいのだ。

 

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