第22話:怒り
「おお、そこまで王家王国の事を考えてくれているとは、天晴である。
だがその心配は不用ぞ、バクルー王家とは話がついておる。
バクルー王家も無用な争いは避けたいのだ。
それは余も同じで、余計な争いを起こして隣国に隙は見せたくない。
だから、問題の元凶となるベアトリス王女と目立つ貴族を我が国で引き受けようというのだ、分かってくれるかな」
本当に身勝手な事を平気で口にする糞王だな、俺の気持ちはどこに行った。
そんな危険な時限爆弾のような王女は自分で引き受けろや。
他人に危険物を押し付けるな、ボゲが、ぶち殺すぞ、ワレ。
ケツの穴から手え突っ込んで奥歯ガタガタいわしたろか、オンドレ、ワレ。
いかん、あまりに腹が立ってしまって、前世の本性を剥き出しにしてしまった。
「……ゴードン侯爵そんなに怒らんでくれ、確かに余が少々身勝手であった。
ただ何の見返りもなく、負担を押し付ける気ではないのだ。
ラゼル公爵家にとっても、ここでバクルー王家の血を入れるのは利があるとおもったのだよ、ロスリン女侯爵が王太子との婚約を辞退してくれた礼になると思って提案しただけなのだよ……」
いつの間にか本気の殺意が漏れていたようだ。
国王が真っ青になってクドクドと言い訳をしている。
王妃に至っては、真っ青になるだけでなくガタガタと震えている。
よく見れば、国王も玉座の手すりを持って目立たないようにしているが、小刻みに震えているのが分かる。
「殿下、王妃殿下、お気を確かにお持ちください王妃殿下」
俺の身体からどうしても漏れる殺気に耐えられなかったのだろう。
王妃が玉座に座ったまま気を失ってしまった。
実際に何かしたわけではなく、殺気が漏れただけでこの醜態かよ。
それで責任ある王妃の務めが果たせるのかね。
まあ、いい、生まれ持っての根性なしはどうしようもないからな。
だが一旦こうなった以上、この機会に言うべき事は言っておこう。
「国王陛下、今まで私もリアナもラゼル公爵家も、できる限り王家のために働いてきましたが、その褒美が危険極まりない王女を押し付ける事でございますか。
これでは忠誠を尽くす価値のない主君だと断じるほかありません。
王家と貴族士族の絆は忠誠と褒美でございますぞ。
このような事を繰り返していては、私とリアナとラゼル公爵家の忠誠を失っただけではすまず、全ての貴族の忠誠を失いますぞ。
この警告が、私とリアナとラゼル公爵家の最後の忠誠と思っていただきたい」
「待て、いや、待ってくれゴードン侯爵。
余が悪かった、この通りだ、この通り頭を下げて謝る。
だから王家を見捨てないでくれ、ゴードン侯爵、ロスリン女侯爵」
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