第16話:農地改革

 俺が一番最初に農地改革をやったのは、当然リアナの台所領となるロスリン伯爵領からだった。

 ロスリン伯爵領が豊かでなければ、リアナの生活を支えることができない。

 俺が何時までも無敵でいられるとは限らない。

 それどころか生き続けることができるとも限らないのだ。

 ゲームの世界に転生するような非常識な現実がある以上、何時同じような非常識で殺されるか分からない。


「山羊と羊、豚と牛、鶏や鵞鳥を購入して村に貸し与えろ。

 牛以外は毎年貸し与えた数と同じだけ税として納めさせろ。

 納税義務は村単位として、不慮の事故や自然死に備えさせるのだ」


 俺はロスリン伯爵領に三圃式農業や輪栽式農法取り入れてみることにした。

 どのような作物の組み合わせがいいのか、どのような農法がいいのか分からないので、農地によってやり方を変えなければいけない。

 幾度も挑戦しなければいけないが、最終的には四圃輪栽式農法、六圃輪栽式農法、輪栽式農法になると思う。

 だがこの世界が本当にゲーム内なら、ゲームデザイナーの性格によって、捻じ曲がった悪意ある罠が張り巡らされているかもしれない。


「承りました、代官は誰になされますか」


 王都家老が俺に聞いてくる。

 確かに誰に任せるかで成功するか失敗するかが決まってしまう。

 何より領民の生活が幸せなモノになるのか不幸なモノになるのか決まってしまう。

 とても重大な決定なので、直ぐに決めるわけにはいかなかった。

 そもそも俺の領地ではなくリアナの領地なので、勝手に決めるわけにはいかない。

 そのリアナの領地を勝手に開拓している言われれば、返事に困るのだが。


「分かった、リアナに相談したうえで決めよう。

 将来的にはリアナに領地経営を任せることになるから、リアナの補佐ができるくらい優秀で、忠誠心のある者でなければいけない。

 更に言えば、リアナと性格的に合う者でなければいけない」


「承りました、それまでは私か息子が準備させていただきます」


「そうか、頼んだぞ」


 王都家老のクレマンは老練な男だから、何の心配もないだろう。

 息子のブノワも働き盛りでなかなか優秀な男だ。

 孫のコームは私や王太子と同年で、私の側近として頭角を現している。

 コームなら今からリアナの片腕になるべく育ててもいい人材だ。

 リアナはずっと王妃になる予定だったから、王宮内で働ける侍女が家臣のほとんどだったから、今から戦える男性家臣や領地代官を育てなければいけない。


「クレマン、リアナを呼んできてくれ」


「承りました」


 両親がリアナの台所領になる予定だった領地を任せていた家臣は、私利私欲に走るわけではないが、能力的にみるべきものがない。

 保守的な人間だから、新しい農法を試せと言っても消極的だろう。

 あの領地はそのままにしておこう、どうせラゼル公爵領に戻すことになるのだ。

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