第15話:爵位制度

 この世界の爵位制度は良くも悪くも無茶苦茶だった。

 まず領地の広さや人口、収入と爵位の上下が全く一致していない。

 領地どころか家屋敷すらない無一文の一族が、公爵を名乗ることもある。

 もっとも実際にはそこまで没落する公爵家はない。

 持参金をもらって婿や嫁を迎えるので、ある程度の所で持ちこたえる。

 もっとも父系が代わると公爵家ではなくなるから、王弟や王子を婿に迎える。


 それと、領地をもたずに王家に仕える宮中貴族もいる。

 前世の正確な使い方とは違っているかもしれないが、大臣や侍従や侍女などの中には、宮中伯爵や宮中子爵、宮中男爵や宮中騎士の称号を与えられている者がいる。

 特に王家に忠誠を誓う近衛騎士や近衛従騎士は、領地をもたない者が大半だ。


 特に爵位と領地有無や収入の差が大きい貴族は、国王や国への献金や、国王個人の寵愛によって爵位を得た者達だった。

 俺が多くの開拓地と男爵位を得たのも、何度も陞爵されたのも、これに近い。

 だから数多くの男爵領に誰も住んでいなくても構わない。

 だが、将来子孫が子弟に爵位を分け与えなければいけない時が来るかもしれないので、開墾による爵位授与基準を満たしておきたい。

 

 未開地を私財で開拓して爵位を得る場合は、男爵位なら最低でも人口二千人を超える必要があるので、スコット男爵領とロロ男爵領の人口は最低でも二千人以上にしておきたい。

 ゴードン侯爵領とロスリン伯爵領とラゼル伯爵領は、開墾による爵位授与基準以上にするのは難しいが、これらの爵位を分家に与える事はないので大丈夫だろう。

 

 ヘプバーン子爵領の人口は急いで一万人以上にしたが、食糧の自給を考えれば無理をしているので、早急に食糧の生産力をあげる必要がある。

 その為に魔術を使う事を躊躇う俺ではない。

 未開地の土地自体を攪拌して根から樹木を倒し、土地を耕さなくても穀物の種を蒔けるようにした。


 倒した樹木は乾燥させないと建築材に使えないのだが、開拓村で材木を乾燥をさせている時間などない。

 生木を使ったログハウスだと、生木が乾燥する時にねじれなどが生じてしまうが、開いた隙間に泥や漆喰を塗って何とかすればいい。

 そもそも王都や貴族領では廃屋や橋の下に暮らしていたのだ、隙間などなんとも思っていない者ばかりだった。


 一番問題なのは、この世界の土地がやせすぎている事だ。

 中国などでは蒔いた種の二十倍から四十倍の収穫がある。

 だがこの世界の農地は、蒔いた種の三倍程度の収穫しかない。

 中世ヨーロッパの現状を正確に再現しているが、ゲームなんだからもっと楽な設定をしろと思う。


「開墾による爵位授与基準」

一:男爵:人口二千人以上

二:子爵:人口一万人以上

三:伯爵:人口二万人以上

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