第14話:逃亡
リアナの婚約辞退は、王家との話し合いがあった五日後に発表された。
王家内で色々と話し合うための時間が必要だったのだろう。
ルナネの聖女伝説を創り上げてから王太子と婚約させたいのだろうが、その為の下準備にはどうしても時間がかかる。
実家が男爵家なのも問題で、最低でも侯爵位くらいには引き上げておきたいのだろうが、多くの貴族が認めるくらいの功績をルナネの聖魔術だけで手に入れようと思えば、必要な功績の量は莫大になる。
「兄上様、父上と母上はどうなされたのですか」
両親が王都屋敷にいない事をリアナは不審に思ったようだ。
別に俺が王都から領地に追いだしたわけではなく、俺が怖くて逃げだしただけだ。
領都の民を苦しめないように、城代家老にはちゃんと監視するように言ってある。
前世の感覚で城代家老と呼んでいるが、公爵家だと家司とか家令とかランド・スチュワードと呼ぶべきなのだろうか。
だがただ領地経営をするだけでなく、領主軍を率いて迎撃戦や籠城戦も行うから、俺の感覚では城代家老なんだよね。
「父上と母上は領地で静養すると言って出て行かれたようだよ。
今回の婚約辞退が気に喰わなかったようだが、それが愚かな考えなのはリアナにも分かるだろ」
「はい、兄上様、そんな事をしてしまったら、王家に睨まれてしまいます。
王家と戦って王位を簒奪する気がないのなら、絶対にすべきではありません」
リアナが哀しそうに言い切った。
実際に国王と王妃に会って話をして、王家の方針を確認したのだ。
他に方法がない事は、賢いリアナなら直ぐに分かる事だ。
同時に、こんな事も理解できずに不貞腐れる両親に絶望もしているのだろう。
両親の言うがままに動いたら、破滅しかない事も分かっているのだ。
これで俺が同じような愚者だったら、ゲームのリアナは絶望していただろうな。
ゲームのリアナは最初から死を覚悟していたのかもしれないな。
「その通りだよ、リアナ。
父上と母上は領地で静養していただくが、領民に無理無体を強要するようなら、教会で神に仕えてもらうようにする、その事はリアナも理解しておいてくれ」
「分かりました、兄上様、私も兄上様の方針に賛成です」
リアナが賢くて本当によかった。
リアナが王妃の座に執着する馬鹿だったら、問題がこじれてしまっていた。
いや、リアナがそんな女だったら、とうに昔に見捨てていたな。
こんな賢く優しい子だからこそ、どうしても助けたくなったのだ。
リアナには幸せになって欲しいと心から思っている。
問題は婚約辞退をしたリアナのこれからの身の振り方だ。
前世は一生独身で自由恋愛を愉しむことも許される世界だったが、この世界では表向きだけは政略結婚をしなければいけないからな。
なんか、無性に腹が立ってきた。
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