第17話:安全第一
リアナと王太子の婚約を解消する事はできたが、手放しで喜ぶ事はできない。
ここがゲームの世界なら、性格の悪いゲームデザイナーが作った隠しシナリオに入っただけで、これからリアナを陥れる罠が張り巡らされている可能性もある。
簡単に安心することなど絶対にできない。
リアナがこの国から逃げられる道や、生き延びられる道を作っておきたい。
「リアナ、今日も領地巡りをするから準備をしなさい」
「大丈夫でございます兄上様、もう準備はできております」
俺とリアナは転移魔法を使って多くの領地を巡った。
ただ巡るだけでなく、民に有利な条件でモノを買い取った。
開拓村の住居や防壁に使わない材木を買い取り、王都で使う薪として売った。
輸送費の関係で、王都では燃料に使う薪や炭が高いのだが、逆に地方では薪や炭がとても安い。
転移魔術が使える俺やリアナは、輸送にかかる費用がないから、王都から遠い国境や魔境近くの村に大目に代価を払っても大丈夫なのだ。
「豊作の領地から集めた小麦と大麦とライ麦も用意しました。
ライ麦は以前のように粥にして王都の貧民に与えますか」
リアナが優しさから提案するが、そんな事をしては王家の思惑から外れてしまう。
それでは婚約を辞退した事が無意味になってしまう。
ここはちゃんとリアナに話しておこう。
「リアナ、王家は光魔術の使い手に名声を与えようとしているんだ。
それを邪魔してしまったら、王家の意向に逆らう事になる。
もう王都で炊き出しをしてはいけないよ、分かるだろ」
「はい、では、もう彼らの事は心配しなくても、王家が助けるのですね」
「ああ、そうだよ、だけど光魔術を目立たせるために、最初は放置するだろう。
だがそれを見て見ぬ振りをしなければ、王家の怒りを買ってしまう。
そんな顔をしなくても、本気で働く気のある者、やり直そうとする者は全員領地に移動させた後だから、今王都に残っているのは働く気のないモノだけだよ。
そんなモノにまで情けをかけて、私達が王家と争う事になったら、領民が困ることになるのだよ、分かるだろ、リアナ」
「はい、私が考えなしでございました、兄上様」
リアナは賢いから、順序立てて話せばちゃんと理解してくれる。
優しさによる民への支援も優先順位をつけなければいけない事を、ちゃんと理解してくれている。
ただ本質が慈愛に満ちているから、つい無制限に支援してしまう事がある。
悪意や敵意を見抜いて、その脅威と敵味方の戦力と財力を計算した上で、支援の優先順位をつけなければいけない事を、これからも繰り返し教えて行こう。
「分かってくれればいいよ、それとこれを非常時の時に備えて渡しておく」
俺は定期的な宝石競売用ではない、とても高価なダイヤモンドと真珠を、大量に汎用の魔法袋に入れてリアナに渡しておく。
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