02

 初めて、学校で見かけたときから。


 どうしようもなく、好きになった。


 でも、立場上、好きになることが許されない相手だった。仕方のないことだと言って、あきらめたくなかった。どうしても。


 車やバイクで学校に来る彼のことを、毎日見つめていた。好き。とても好き。大好き。


 でも、声はかけられない。


 悶々とした日々がしばらく続いていて、そして。ある日。


 SNSで、彼を見つけた。匿名の、右折という名前のユーザー。アップロードしている写真が、彼の車やバイクと同じものだった。


 学校にいる間、ずっと。彼のSNSを見てにやにやし続けていた。もともと、暇だし。


 ある日。


 耐えきれなくて。


 投稿に、コメントを付けてしまった。


 コメントしてから、激しく後悔した。


「なによ、この文章。だめだめじゃない」


 特に、最後に付けた顔文字がだめ。とってもだめ。自分の髪型を顔文字に落とし込んだものだけど、分かってもらえなさそうだった。


 でも、一度コメントをしてしまうと。


 止められなくなった。


 彼の投稿に、毎日コメントしまくった。


 好きだという気持ちが。あふれていた。


 迷惑かもしれないのに。何やってるんだろう私。ばかみたい。


 でも、SNSだから。お互い、匿名だから。普通のコメントをするぐらいは。


 そうしていたら。


 返信が来た。


『S・N・Sって、なんですか?』


 彼から返信が来たことが。嬉しかった。


 いそいで、返信しようとして。


 返信すると色々とまずいということに。気付いた。この顔文字は、私の髪型を模したもので。学校内で、この髪型をしてるのは。私だけ。


「だめだ。これはわたし、返信、できない」


 泣く泣くスルーした。


 でも、毎日の投稿へのコメントは続けた。好き。あなたのことが。言葉には出さないけど、コメントの一文字一文字に。その想いを込めた。


 そうしたら。また返信が来た。


『あなたは、誰ですか?』


 悶えた。私に興味を。もってくれた。


 ぎりぎりの、踏み越えてはいけないラインのぎりぎりで、踏みとどまった。返信。


『S・N・S』


 これだけ。これなら、私が誰かという回答になるし。それでいて、私が特定されることもない。


 そうしたら。


 返信の返信の返信が来た。


『俺があなたを見つけたら。恋をして、くれますか?』


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