S・N・S (15分間でカクヨムバトル)

春嵐

01

 学生の身分なので。学校には通っていた。


 全ての単位も取得し、出席をとるだけの、単純な作業。ただ来て、そして帰るだけ。学位は博士以降も取得するだけ取得したが、全て仕事関連だった。


 そんな、日々のなかで。


 暇つぶしに立ち上げた、SNS。匿名で投稿ができたので、自分の車やバイクの画像を投稿したりしていた。


 十五才だけど。官邸に顔の利く正義の味方の仲介で、免許は大体持っている。三輪車から、航空機まで運転が可能。


 運転できたところで。学生生活には、なんの意味もなかった。せいぜい、画像をSNSに上げる程度。


 いいねもサブスクリプションも、たいして付かない。おそらく、電子部門担当の正義の味方が閲覧をコントロールしているのだろう。なんの気兼ねもなく、SNS使い放題だった。


 今日も。出席だけをして、学校を出る。


 車に乗り。シートに深く沈まる。


「ふう」


 学生生活。なんの青春も、していなかった。


「そんなもんか」


 正義の味方だから。しかたがない。


 携帯端末を取り出して。いつものように、SNSを開く。


「ん?」


 投稿に、コメントがついている。


『いつもそのお車で学校に来ているんですね(ハートの絵文字)。いつもかっこいいですS・N・S』


「誰だこいつ」


 電話してみる。電子部門担当の、正義の味方。


『はいどうも。廾希です』


「あ?」


『おお。右折野郎じゃねえか』


「なんでお前が出るんだよ。電子部門担当の正義の味方はどこだ」


『そいつは俺の嫁だ』


 そういえば。結婚したと言っていたか。


『嫁は働きたくないってよ。だから俺が出たわけだが』


「このSNSの投稿は、なんだ」


 電話先。訊いている声。


『おう。おまえのことが好きな人間の投稿だってさ』


「俺のことが、好き?」


『よう知らんが、まあ、青春しとけ。十五才』


 それだけ言われて。電話が切れた。


「俺のことが。好き?」


 よくわからなかった。


 次の日も。


 その次の日も。


 そこからずっと。


 投稿に、コメントがついた。


『いつも見てます(ハートの絵文字)。良いお車ですねS・N・S』


『今日は雨でしたね(ハートの絵文字)。お車は大丈夫でしたか? S・N・S』


 そんな感じの緩い投稿が、続いた。


 意を決して。


 返信してみた。


『S・N・S って、なんですか?』


 返信の返信は。来なかった。


 しかし。毎日のように、投稿にコメントがついていった。


 そのうちに。この投稿主を好きになっていく、自分がいた。ちょろいやつだと、自分でも思う。会ったことがなくて。学校にいるらしいということしか、分からないのに。なぜ、こんなにまで。心惹かれるのだろうか。


 意を決して。


『あなたは誰ですか?』


 そう、返信してみた。


 返信の返信。


『S・N・S』


「いや、意味わかんねえなあ」


もうひとつ、返信してみる。


『俺があなたを見つけたら。恋をして、くれますか?』

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